湿気や結露による故障リスク
湿気の侵入による結露
湿度の高い制御盤内では僅かな温度差で結露します
日本や東南アジア地域には、非常に高温多湿な梅雨や雨季があります。日本の平均湿度は地域によりますが、おおよそ65~70%もあり、特に6~9月の平均湿度は75~80%に達します。最近では線状降水帯や集中豪雨のため急激な湿度上昇が頻繁に発生しています。さらに自動車部品工場などの金属部品の切削工程では、湿気とクーラントにより非常に高湿条件となります。
このような環境下の制御盤は盤内湿度も高く、急激な温度変化で盤内の制御機器や電子機器表面に結露を生じさせ、電気回路上の短絡を起こしたり、時には重大な故障トラブルをまねくことになります。
下のグラフから、相対湿度が高くなるほど僅かな温度差で結露が発生しはじめることが分かります。特に昼夜の温度差や休日明けの始動時の温度上昇などは結露のリスクと隣り合わせとなっています。
結露発生条件特性
基板上の電子部品の結露痕
制御盤内の熱・湿気対策についてご紹介!
熱や湿気による制御盤のトラブルにフォーカスし、その原因と対策方法についてご紹介します。
湿気による金属腐食
湿気は制御基板や金属接点に腐食を発生させます
湿度が高くなると金属に錆が発生し、腐食が増大します。また湿度ともに温度が高くなると、さらに腐食が加速すると言われています。下のグラフでは、60%を超えると錆・腐食が急速に進むことが分かります。
錆や腐食がひどくなると、多くの金属接点(リレー・電磁開閉器など)や金属接合部をもつ制御機器は、回路の断線・導通不良、接点の動作不良のリスクが高くなります。
周囲湿度とサビ発生の関係
端子台活電部の金属腐食
リレー内部のコイルの腐食による断線
湿気による絶縁劣化
絶縁劣化で漏電や感電の危険が高まります
絶縁物の絶縁特性は、湿度が高くなると低下します。多くの制御機器が収納されている制御盤も、高湿環境で使い続けると、目に見えない制御機器内部や電源ケーブル、配線などの絶縁劣化が進行します。
絶縁劣化が進むと漏電が大きくなり、作業者の感電リスクが高まるだけでなく、漏電遮断器が感知し、急な電源停止で機械や装置が運転停止し、点検調査から部品交換まで生産がストップする可能性が発生します。
電源ケーブルは長時間、絶縁体被覆が湿気やオイルミストに浸潤され温度変化による伸縮が発生すると内部に気泡(ボイド)が生じ、そこで部分放電が起こり、絶縁破壊を起こすことがあります。
相対湿度と絶縁特性
電気回路の絶縁測定
金属マイグレーション
金属は水と反応し表面が溶け出します
イオンマイグレーションとは、空気中の水分子が金属表面に付着した時に、金属に電圧が印可されて、その表面から金属イオンが溶け出す現象のことをいいます。
金属イオンマイグレーションが進むと、隣の導体(金属)とくっついて、短絡してしまう危険をはらんでいます。また導体と接触した瞬間に流れる大電流により、回路が焼き切れることも多く、非再現性のトラブルの原因にもなります。
基板のパターン間に発生したマイグレーション
実装部品下側に発生したマイグレーション