オイルミストの濃度測定は義務?

工場における切削作業などで発生する「オイルミスト」。オイルミストの濃度測定は義務化されていませんが、人体や環境への影響を考慮すると測定することが望ましいといえます。今回は、オイルミストの許容濃度や測定方法、オイルミストが飛散することで想定される影響をご紹介。オイルミスト対策の方法も解説していますので、ぜひご覧ください。

INDEX

オイルミストの濃度測定義務と許容濃度

⽇本において、オイルミストの濃度測定は義務化されていません。
⽇本産業衛⽣学会が提案する許容濃度「3mg/m3」が目安です。

オイルミストを吸⼊すると、肺に障害が⽣じやすくなるだけでなく、発がんリスクが⾼まることが指摘されています。不⽔溶性の切削油剤などを⽤いる設備が⾝近にいる作業員の健康を守るためにも、作業場ごとに適切に濃度測定・管理を⾏う必要性が⾼まっています。⽇本産業衛⽣学会では曝露限界値を3㎎/m3と発表していますが、濃度測定義務はありません。

そもそもオイルミストとは

オイルミストとは、空気中に浮遊する微粒子状の油です。たとえば、金属切削や加工の現場では、切削油や潤滑油が付着した機械が高速で稼働することで油が微細化され、オイルミストとなって浮遊します。
また、圧縮空気を作る際に潤滑油が混入することや、作業場の温度上昇によって油が揮発することも、オイルミストの発生原因です。切削油や潤滑油は工具の劣化を防ぎ、製品の仕上がりを美しくするために必要ですが、人体や環境に与える影響についても考慮しなくてはいけません。

オイルミストの濃度を測定する理由

オイルミストの濃度測定は義務化されていませんが、⾦属加⼯などのオイルミストが発⽣する業務を⾏う作業場では、オイルミスト濃度の管理や測定が推奨されています。オイルミストの濃度が許容基準を超えた状態が続くと、さまざまな好ましくない影響が⽣じてしまうためです。主な影響について⾒ていきましょう。

  • 人体・健康への影響
  • 作業環境への影響
  • 機械や設備への影響

⼈体や健康への影響

空気中に浮遊しているオイルミストが、⽪膚に付着したり⽬に⼊ったりすることで、痛みや肌荒れを引き起こすことがあります。気づかないうちに作業中にオイルミストを吸い込み、呼吸器系の疾患につながるケースも。
また、オイルミスト特有のにおいにより、不快感や頭痛を招くこともあります。

オイルミストの人体への影響についてはこちら

作業環境への影響

オイルミストの濃度管理を適切にしていないと、⼯場内の天井や壁、床などにオイルミストが付着した状態が続きます。ホコリや汚れがつきやすくなるため、⼯場全体が不衛⽣になってしまうかもしれません。
また、付着しているオイルミストの量が多いと、天井から油滴が落ちたり床が滑りやすくなったりすることもあります。作業員が転倒・滑落しやすくなるため、作業場内での事故が起こりやすくなってしまいます。

機械や設備への影響

油は機械・設備をスムーズに動かすために必要ですが、空気中に浮遊するオイルミストは機械・設備に悪影響を及ぼすことがあります。
たとえば、空気中のオイルミストが⾼濃度な状態が続くと、制御盤や空調設備にもオイルミストが⼊り込み、故障や腐⾷を招く可能性があります。定期的にメンテナンスすることで故障を防ぐことができますが、⼿間がかかるだけでなくコストや時間もかさんでしまうでしょう。

オイルミストの濃度測定⽅法

オイルミスト濃度測定の義務はないため、濃度測定の⽅法についても明確な決まりや基準はありません。濃度測定を⾏う場合には作業場ごとに測定基準を決めて、測定する必要があります。
オイルミストの濃度測定⽅法について、労働安全衛⽣法で定められているような明確な基準はありません。⼀般的な作業環境測定と同様に、定期的に・定点的に・同様の⼿法で測定することで、より正確な測定を⾏うことができます。
参考に、⼀般的な作業環境測定における、測定⽅法決定のポイントを記載します。

  1. 単位作業場所の決定
  2. 測定点の決定
  3. 測定⽇、測定時間帯の決定
  4. 測定に使⽤する機器の決定

代表的な測定⽅法と測定機

オイルミストの濃度測定⽅法は、計測環境の特徴や計測⽬的によって、さまざまな⽅法、さまざまな測定機を⽤いて測定を⾏います。ただし、オイルミストだけでなく空気中に浮遊している粉じん等も⼀緒に計測してしまうため、オイルミストだけを評価することが難しいという点には注意が必要です。
以下で、代表的な測定⽅法と測定に使⽤される機器を紹介します。

  • フィルタ秤量法
  • ピエゾバランス式
  • 光散乱式
  • 顕微鏡法

オイルミストの濃度測定は、専⽤の測定器を⽤いて⾏います。ただし、オイルミストだけの濃度を測定することは困難なため、空気中に浮遊している粉じんの量を測定する⽅法を活⽤することが⼀般的です。代表的な測定⽅法を紹介します。

フィルタ秤量法

フィルタ秤量法とは、浮遊している粉じんをろ紙などに取り、天秤で重さを測って⼤気中の濃度を算出する⽅法です。特別な機械がなくても、オイルミストを含む粉じんの濃度測定ができます。

代表的な計測器:ローボリウムエアサンプラー・サンプリングポンプ+捕集⽤フィルタ

ピエゾバランス式

ピエゾバランス式とは、静電気によって空気中に浮遊する粉じんを集め、天秤で重さを測る⽅法です。⼤きな粒⼦を取り除いて計測できるため、フィルタ秤量法と⽐べると正確性が⾼い特徴があります。また、短時間で濃度を計測できるのも、ピエゾバランス式のメリットです。

代表的な計測器:ピエゾバランス式粉じん計

光散乱式

光散乱式とは、捕集した粉じんにレーザーの光を当て、光の強弱でオイルミストの量や流れを測定する⽅法です。構造が単純で⽐較的安価なため、家庭⽤の空気清浄機などにも利⽤されています。

代表的な計測器:光散乱式デジタル粉じん計、パーティクルカウンター

顕微鏡法

浮遊している粉塵を捕集した後に標本化し、顕微鏡で直接観察して、粒⼦の形状や⼤きさを解析する⽅法です。粒⼦の⼤きさや形状、表⾯状態なども同時に計測することができ、他の測定法に⽐べて得られる情報量が圧倒的に多いのが特徴。

代表的な計測器:ローボリウムエアサンプラー・サンプリングポンプ+捕集⽤フィルタ

濃度測定に加えてオイルミスト対策が必要

適切にオイルミストの対策を実施しないと、⽬安となる濃度基準を上回った状態が続く可能性があります。⼈体や作業環境、機械に好ましくない影響を与え、被害が⽣じることもあるでしょう。
良好な環境を保つためにも、濃度測定を実施することに加え、オイルミスト対策が必要です。特に検討したいのが、ミストコレクターの導⼊です。

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ミストコレクターとは

ミストコレクターとは、⼯場内の空気・環境を良好に保つための装置です。オイルミストを吸引して空気から分離・除去し、空間を清浄な状態に保ちます。
ミストコレクターは、内部構造の違いによっていくつかの種類に分けられます。ミストコレクターを設置する機械や環境に合わせて、適切な種類と設置⽅法を選ぶことが重要です。

ミストコレクターの主な種類

ミストコレクターは、内部構造によってフィルタ式とディスク式、サイクロン式(フィルタレス式)、電気集塵式に分けられます。各種類の特徴と仕組みは以下をご覧ください。

捕集方式 特徴
フィルタ式
物理的なフィルタを通じて粒子を捕集する仕組みです。シンプルな構造で、専門的な知識がなくても管理できます。フィルタの定期的な交換が必要です。
ディスク式
高速回転させたディスクに衝突させて捕集します。フィルタが付いていないため、フィルタ交換における産業廃棄物が発生しないなどのメリットがあります。
サイクロン式(フィルターレス式)
遠心力を用いて粒子を分離します。一般的なサイクロンで捕集できる粒径は数μm以上といわれ、捕集効率は電気式やディスク式に劣ります。交換部品が少ないのはメリットです。
電気集塵式
静電力を利用して油分を吸着して捕集する仕組みで、微細な粒子も捕集できます。初期設備投資が高いことや、高電圧装置の取り扱いに注意が必要です。

アピステのミストコレクターはメンテナンス性能の⾼いディスク式を採⽤しています。メンテナンス性能だけでなく、捕集性能と省エネ性にも優れているミストコレクターGME-S-Pro/ecoシリーズについてご興味のある⽅は下記よりご確認ください。

オイルミストの濃度測定と対策を実施しよう

オイルミストは作業場の環境を汚染するだけでなく、⼈体や機械にも好ましくない影響を及ぼすことがあります。働きやすく安⼼できる作業場にするためにも、適切にオイルミストの濃度を測定し、対策を実施することが必要です。
オイルミストの対策やミストコレクターの導⼊のお悩みは、下記からご相談を受け付けていますのでぜひお気軽にご相談ください。

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