水槽内蔵式チラーと水槽なしチラーの構造上の違いと特徴
チラーには空冷式や水冷式の他にも水槽の有無などによる分類があり、その構造や特徴が自社に適したものであるかの判断は非常に難しいものです。
水槽を元から内蔵しているチラー、外部の水槽を利用するチラーにはそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。今回は、水槽内蔵式と水槽なしチラーの違い、基本構造や特徴、メリット・デメリットなどについて解説します。
1.チラーには水槽内蔵式と水槽なしの2種類がある
チラーは「水槽内蔵式」と「水槽なし」という2つの種類に分類され、水槽内蔵式は「クローズ回路用チラー」、水槽なしは「オープン回路用チラー」とも呼ばれています。
ここでいう水槽とは、チラーが循環させる冷却水を貯めておくタンクのことです。
内部に冷却水タンクを持つクローズ回路用チラーは、外部に特別な配管設備などが不要なため、狭いスペースでも設置可能。熱源機器とチラーを直接接続して冷却します。
一方、オープン回路用チラーは冷却水を外から引き込むため、外部に水槽と配管設備が必要で、広いスペースが求められます。しかし、水槽内蔵式ではできないオープン水槽の直接冷却ができる、既存設備を活かしてチラーを新調する場合、低コストで済むなどのメリットがあります。
それぞれの特徴を踏まえて、現場に適したタイプを選ぶことが大切ですので、次章から詳しく見ていきましょう。
2.水槽内蔵式チラーの特徴
まずは、水槽内蔵式チラーの構造や特徴についてご紹介していきます。
■水槽内蔵式チラーの特徴
水槽内蔵式チラーは、冷却水となる液体が入った水槽と冷凍回路、圧送ポンプを内蔵しており、新たな水槽やそれに伴う配管がいらない手軽さが一番のメリットです。クローズ回路用、密閉回路用、タンク内蔵型とも呼ばれています。
水槽の吐出側に圧送ポンプがついているので十分な吐出し力がありますが、流入側には動力がないため、吐出量と同じ量の冷却水を水槽内に流入させるには、負荷側(冷却対象物側)を密閉系回路にする必要があります。
また、タンクの拡大ができないことや開放型水槽に直接つなげられないというデメリットも覚えておきましょう。
水槽内蔵式チラーで開放型水槽の液体を温調する場合は、以下の図のように熱交換器を使って間接的に冷却することになります。
■水槽内蔵式チラーのメリット・デメリット
水槽内蔵式チラーの長所と短所をまとめると、次のようになります。自社工場の特性や条件に合わせて導入を検討しましょう。
<水槽内蔵式チラーのメリット>
- ・配管とチラー本体をつなぐだけで配置できる
- ・水槽を別途で用意する必要がない
- ・省スペースで設置できる
<水槽内蔵式チラーのデメリット>
- ・水槽の大きさを変更できない
- ・メンテナンスが難しい
- ・開放型の水槽に直接つなぐことが出来ない
3.水槽なしチラーの特徴
次に、水槽なしチラーの構造や特徴を見ていきましょう。
■水槽なしチラーの特徴
水槽なしチラーは、その名の通り内部に水槽を持たず、外部にある水槽の液体を循環ポンプで引き入れて冷凍回路で冷却する仕組みです。開放回路用、オープン回路用とも呼ばれています。
水槽なしチラーは、水槽やポンプをチラー外部に用意する必要があるため、それに伴うシステムや配管の設計も必要になります。水槽の新規導入には手間とコストがかかるため、既存水槽の冷却目的で使用されるのが一般的です。
しかし、設備が外部にあるということは、水槽の拡大やチラーの入れ替え、配管のメンテナンスなどが容易ともいえます。
将来的に水槽や設備の変更が予想される場合は、水槽なしチラーを選ぶのもひとつの手です。入れ替えの際は、チラーの機種によってタンク容量に規定があるので注意しましょう。
また、本体がコンパクトなので、すでに水槽があるのであれば、設置スペースは内蔵式よりも小さく収まります。
■水槽なしチラーのメリット・デメリット
先程ご紹介した以外にも、水槽なしチラーには次のような利点・欠点があります。水槽内蔵式と比較して、どちらが適切か選ぶことが大切です。
<水槽なしチラーのメリット>
- ・開放型の水槽に直接つなぐことができる
- ・既存の水槽を活用できる
- ・水槽や配管、システムがオープンなためメンテナンスや入れ替えが容易
- ・チラー本体がコンパクト
<水槽なしチラーのデメリット>
- ・水槽やポンプ、それに伴うシステムや配管が別途必要
- ・新規の場合、水槽や配管の設置スペースが必要
- ・チラーの機種によって水槽容量に規定がある
4.まとめ
チラーは内部の水槽の有無によって、「水槽内蔵式」と「水槽なし」の2種類に分けられます。
水槽内蔵式のチラーは、新たな水槽や配管を設置する必要がなく、手軽に省スペースで導入できるのが一番のメリットであり、密閉系の冷却対象物に直接接続して冷却できます。
水槽なしのチラーは、水槽や配管設備が別途必要になるため、初回設置に手間とスペースが必要とされますが、既存の水槽を冷却する場合や将来的に設備を入れ替える場合は有利です。
双方のメリットとデメリットを考慮して、最適なチラーを選びましょう。