タンク内蔵型チラーの配管と周辺の配管のポイント
チラーとは、対象の原料や機械の温度調整を行う機器のことで、冷凍回路と水槽、その2つを接続する配管で構成されます。
配管は冷却水を設備に運ぶ役割を担っており、閉塞運転やエア溜まりが発生すると工場の生産性に影響する可能性があります。
今回は、タンク内蔵型チラーの配管や周辺の配管、バイパス回路設置などのポイントについてご紹介します。
1.タンク内蔵型チラーの配管のポイント
タンク内蔵型のチラーの場合、タンクの吐出側にポンプが付いているため、吐出力は十分ですが、流入側はタンクにつながっているのみで動力が働きません。
ポンプの吐出量と同量の循環水を常にタンク内に流入させるには、負荷側を密閉系にする必要があります。開放型の液槽に直接つなぐことは基本的に出来ません。
もし、開放系のタンクを冷却対象にする場合は、熱交換器やポンプを間に設置し、間接的に冷却するようにしましょう。また、浸漬型の熱交換器をタンク内に浸漬させる方法も可能です。
2.チラー周辺の配管ではエア抜き弁を設置する
チラー周りの配管で注意しておきたいトラブルがエア溜まりです。
エア溜まりはウォーターハンマーやエロージョンなどの原因になるため、エア抜き弁を活用し防いでいきます。
エア抜き弁とは
エア抜き弁とは、配管内の空気を効率的に抜くための部品で、弁体とフロートによって構成されています。
満液状態ではフロートが上昇し弁体と密着することで配管内が密閉されますが、配管内の液量が低下するとフロートは下がり、弁体との隙間から内部の空気が配管外に抜けていきます。
エア抜き弁の設置箇所
エア抜き弁は、どこに設置してもいいというわけではありません。主にポンプの吐出側配管に使用されますが、中でも次のようなエア溜まりが発生しやすい箇所に重点的に設置することで高い効果を発揮します。
(1)配管の頭頂部
気体は液体よりも密度が小さいため、配管上部に集まるという特性があります。配管の最上部にエア抜き弁を設置することで効率的にエアを除去できます。
(2)長い横引き配管
通常、一定以上の長さの横引き配管を設置する場合には、勾配を取って配管内のエアを一方向に集約することが望ましいのですが、設備上勾配が付けにくい、あるいは横引き配管が長すぎるといった場合には、配管の途中にエア抜き弁を設置します。
(3)鳥居配管
鳥居配管とは、障害物を避けるために鳥居のように物体をまたいで設置された配管のことです。上部にエア溜まりが発生しやすく、どちらの方向にも抜けにくいため、エア抜き弁の設置が欠かせません。
3.チラー閉塞運転を防止するバイパス回路
チラーの配管では、閉塞運転を防止することも大切です。最後に、閉塞運転を未然に防ぐためのバイパス回路の必要性と設置時のポイントについて説明します。
バイパス回路を設置する必要性
チラーなど、冷凍機器の吐出側配管が閉塞した場合、ポンプケーシング内に滞留した液体が異常加熱し、ゴムや樹脂の部品・シール材が破損する、またはポンプ自体の寿命が短くなる可能性があります。
さらに、熱交換器内に循環水が滞留し、水が凍結膨張することで熱交換器が破損する可能性もあります。
このようなリスクの低減を図るために、バイパス回路の設置が重要になります。
バイパス回路設置時の4つのポイント
チラーの配管でバイパス回路を設置する際は、次の4つのポイントを押さえましょう。
1つ目のポイントとして、バイパス回路の仕切弁には流量調整が可能なグローブバルブを設置します。ボールバルブを選択すると流量がコントロールできなくなるので、要注意です。
2つ目のポイントは、長さを調整できるフレキシブルホースを使用することです。チラーユニットは、循環水行・戻の配管位置が固定の場合が多く、バイパス部の長さを調整することは難しいため、フレキシブルホースを使用することで簡単に配管施工を行えます。
3つ目のポイントは、継手にユニオンやフランジ配置を用いることです。配管の着脱のことを考えると、差し込み溶接や突合せ溶接はあまり適切とはいえません。
段取り替えや、メンテナンスが高頻度で発生するという場合は、ワンタッチ継手を使用することが4つ目のポイントです。例えば、ロールや金型など、品種によっては配管経路の一部を構成する部品を高頻度で替えることが想定されます。
また、ワンタッチ継手には、継手を外した時に内部の流体が流出する「開放型」とスプリングによりバルブが閉じることで内容流体が流出しない「開閉型」があるため、使用方法に応じて使い分けることも大切です。
4.まとめ
機器や原料を効率的に冷却するチラーは、安定した工場稼働に欠かせない要素です。そのため、閉塞運転やエア溜まりといったトラブルには、常に注意しておく必要があります。
エア抜きバルブの設置や閉塞運転を予防する配管を採用し、トラブルを未然に防ぎ生産性を落とさないようにしましょう。