地球温暖化の影響~地球・ヒトへの影響から知る~
地球温暖化の影響は気温が上昇するだけではありません。
地球全体の気候が大きく変化します。すでに世界各地で様々な影響が現れ始めており、自然環境や人の暮らしにも重大な問題を引き起こしています。
今回は、地球温暖化が地球とヒトに与える影響などについてご紹介します。
目次 [非表示]
1.地球温暖化の主な原因
一般的に地球温暖化の原因は大気中の温室効果ガスの増加が最大の原因と言われています。
温室効果ガスは、18世紀後半の産業革命以降増え続けており、特に20世紀になってからの100年間で地球温暖化が急激に進みました。
これにより、気温上昇以外にも様々な影響が地球規模で起こっています。次の章から、地球やヒトに与えている具体的な影響をご紹介していきます。
2.地球温暖化の影響~地球編~
まずは、地球温暖化が地球の環境をどのように変えていくのかを見ていきます。
①.気温・海水面の上昇
地球温暖化の影響で最も知られているのは気温や海水面の上昇です。
大気中の温室効果ガスの濃度増加に伴い、世界のほぼ全域で平年の気温が昔に比べて高くなっています。IPCCの第5次評価報告書によると、1880年~2012年の期間に0.85℃ほど平均気温が上昇しているとされています。
また、海水の温度が上昇したのもほぼ確実と考えられており、1971年から2010年における海洋表層(0~700m)の水温や1992年から2005年における深層(3000m~海底)の水温はいずれも上昇したと考えられています。
気温や水温の上昇と比例するような形で海水面も上昇しており、環境省によると1901年~2010年の期間に、世界の平均海面水位は0.19m上昇したとされています。
海面が上昇すると、沿岸侵食の拡大、土地や財産の損失、人々の移住、高潮リスクの増大、沿岸の自然生態系の減衰、淡水資源への海水の浸入など、様々な悪影響が生じます。
現に、フィジー諸島共和国、ツバルなど海抜の低い多くの島国では高潮による被害が深刻であり、海水が住宅や道路に浸水し、田畑や井戸に入り込み作物が育たない、飲み水が塩水となるなど生活に大きな影響が出ています。
地球温暖化が進むと、今後も平均気温や海水面は上昇していくと推測されており、21世紀末には平均気温は最大4.8℃、海水面は最大0.82m上昇すると試算されています。
②.氷や降雪量の減少
地球温暖化により、北極圏に位置するグリーンランドや南極の氷床、各地の氷河も減少しています。また、北半球では春季の積雪面積も減少していることが確認されています。このまま地球温暖化が進むと、この現象はさらに強まると考えられています。
特に、北極への影響が深刻となっています。2010年に開催されたCOP10(第10回締約国会議)では、この30年間で100万平方キロメートルに及ぶ面積の海氷が溶けてなくなったとされており、この面積はテキサス州やアリゾナ州(もしくは、ノルウェー・デンマーク・スウェーデン)をあわせたものに匹敵します。
氷の減少は、海水面の上昇に大きな影響を与えていますが、地球温暖化にも影響しています。土や海面と比べると氷の太陽光反射率は極めて高く、80~90%を宇宙に返すといわれています。(土は25%程度、海面は10%程度)
太陽からの光を反射する面積が減少すると、熱が地表にとどまる可能性が高まり、地球温暖化をさらに加速させることにつながります。
③.降水量の変化
降水量も温暖化の影響を受けており、その変化は地域で大きく異なります。
IPCCの第5次評価報告書によると、日本やアメリカ、中国、ヨーロッパなどが位置する北半球の中緯度地域では、「1951年まで降水量が増えている可能性がある」という懸念程度の変化であったが、それ以降は確実に降水量が増加していると考えられています。
また、2081年~2100年における平均降水量は、高緯度地域と太平洋赤道地域では増加し、中緯度地域や亜熱帯の乾燥地域では減少すると予想されており、降水量が多い地域と少ない地域の差が広がると懸念されています。
先進国のような資金のある国では、降水量の増低に対しある程度対策を講じることができますが、そうでない国では、洪水や水不足などの問題が深刻化していくと不安視されています。
日本では、ゲリラ豪雨と呼ばれる短時間に降る強い雨が増えていることが、アメダスによって明確に確認されています。
④.野生生物の絶滅
地球温暖化は、様々な植物や野生生物を絶滅の危機に追い込んでいます。
多くの植物や生物は、現在の急速な気候変化に対応する事ができず、滅びていくことが想定されています。
WWFジャパンによると、現在地球温暖化の影響を受けていると考えられる野生生物の数はおよそ2800種ですが、今後さらに増加してゆくと試算しています。これまでは、乱獲や生息環境の破壊、外来種などが野生生物の主な絶滅要因でしたが、これからは地球環境の変化によるものが増加していくと考えられます。
3.地球温暖化の影響~ヒト編~
次に、ヒトに与える影響をみていきましょう。
①.水・食糧不足
地球温暖化による最も深刻な問題の1つが、水や食料不足です。
先ほどご紹介したように、地球温暖化により地球の環境は大きく変化していくため、これまで育っていた植物が育たなくなり、以前は生息していなかった生物による被害、漁獲量の減少など、懸念されている問題は数多くあります。
例えば日本の場合、農林水産省によると、水稲の場合は2060年代に全国平均で気温が約3℃気温が上昇すると、潜在的な収量が北海道で13%増加するのに対し、東北以南では8~15%減少するとされています。
また、九州の水田域は地球温暖化が進むことで、2030年代8月期には潜在的な水資源量が現在よりも約30mm減少(蒸発散量が現在よりも約20%増加)と予測しており、食料自給率の低い我が国において、水・食糧不足は直視すべき問題だといえます。
こうした問題が世界各地で起こるため、地球温暖化が進めば、さらに深刻な影響が及ぶことが容易に想像できます。
②.健康被害
地球温暖化でイメージされる健康問題として熱中症が有名ですが、実は感染症のリスクも高まり、深刻な問題となっています。
特に懸念されているものは水媒介性感染症であり、汚染された水が原因で発生します。例えば、水温上昇により大腸菌など水を汚染する原因が増加していくことが挙げられます。
こうした問題は、上下水の設備が整っていない途上国にとっては大きな問題であり、このままいくと水媒介性感染症はますます増加していくと考えられています。
また、日本にとっても他人事ではなく日本脳炎やデング熱などを媒介する媒介動物の分布が増え、感染症リスクが高まると考えられています。
③.経済格差
地球温暖化は、世界各地で経済的な格差を加速させる恐れがあります。
日本やアメリカ、欧州などの先進国では、地球温暖化の悪影響に対処するための技術力やそれを普及させる資金力があります。また、地球温暖化が進むにつれて変化する環境に対応するために、さらなる技術革新も期待できます。
しかし、多くの発展途上国は、地球温暖化の進行を遅らせるための設備投資をする資金や設備そのものを用意する力がなく、経済発展が大きく鈍化してしまう恐れがあります。結果的に、先進国と途上国の間には、今よりも大きな経済格差が生まれる可能性があります。
また、地球温暖化が進行してしまった場合も同様で、地球環境の変化に適応できる設備を用意できない途上国では、先進国以上の損害がでることが考えられます。
4.まとめ
地球温暖化は、気温の上昇や異常気象など様々な悪影響を地球に対して与え続けています。
また、水や食糧不足に陥るなど、私たちにも悪影響を及ぼしつつあります。
現在は地球温暖化の影響を鑑みて世界各地で様々な取り組みが展開されていますが、さらに影響を減らすためには1人1人の小さな取り組みの積み重ねも大切になります。
参考サイト
環境省 “第5次評価報告書の概要” [第1作業部会(自然科学的根拠)] 環境省 2014年12月版
https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf
JCCCA “vol.5 世界で一番早く、そして深刻な影響が出ている北極”
https://www.jccca.org/trend_world/conference_report/cop10/cop10_06.html