地球温暖化と異常気象の関係、異常気象による影響
季節外れの大型台風が上陸、観測史上最高の気温を観測されるなど、異常気象と呼ばれる事が起こると、決まって要因に地球温暖化があげられますが、具体的にはどのような関連性があるのでしょうか。
今回は、地球温暖化と異常気象の関係を詳しくご紹介します。
1.異常気象の定義
簡単に異常気象の定義を確認しましょう。気象庁では、異常気象を次のように定めています。
“原則として「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」を異常気象としています。”
引用元
気象庁「「異常気象」の定義はあるのですか?」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq19.html
(2019年7月11日)
上記のように、起こる頻度が非常に少ない異常気象ですが、近年は異常気象と考えられる自然災害が頻発するようになり、地球温暖化との関係が指摘されるようになりました。
次の章では、地球温暖化と異常気象の関係について詳しく見ていきましょう。
2.地球温暖化と異常気象の関係
集中豪雨や熱波といった異常気象といわれる自然災害が世界各地で頻発していますが、これらは地球温暖化と密接な関係があると考えられています。
これまで、異常気象の原因の大半は、偏西風の蛇行や台風などの気象擾乱、エルニーニョといった大気の内部変動や海洋との相互作用とされてきました。
しかし最近は、大気中の温室効果ガス濃度の高まりに伴って地球の平均気温が上昇することで降雨パターンが変動し、異常気象の発生頻度が高まったとされています。
実際、降雨パターンの変化によって、さまざまな影響が出ています。例えば、熱帯地域では台風・ハリケーン・サイクロンといった熱帯性低気圧が猛威を振るい、中緯度地域では乾燥化が進行し、高緯度地域では洪水や高潮などの被害が多くなっています。
もちろん、降雨パターンの変化は、日本にも影響を与えています。国土交通省によると、日本海側では降雪量が減少し、融雪量と降雨量を合わせた地表到達水量も減少することから、河川流出量が減ると予測しています。
3.温暖化による異常気象の影響
異常気象と地球温暖化の関係性をご説明しましたが、ここからは具体的に異常気象がどのような影響を与えるかについて見ていきましょう。
農作物への被害
地球温暖化による異常気象の影響としては、まず農作物への被害が挙げられます。
例えばみかんの場合、品種や地域によって多少ずれもありますが、日本でのみかんの収穫期は11月~12月が一般的です。しかし、9月~10月の秋季に高温や豪雨の影響を受けてしまうと、果実が日焼けや浮皮症になってしまい、出荷できなくなることがあります。
また、水稲栽培では登熟期の平均気温が27℃を上回ると、玄米の全部または一部が乳白化し、粒が細くなる白未熟粒が多発してしまいます。
海外でも同じような影響が確認できます。高温と干ばつが続くことで、南ヨーロッパの一部では農作物の生産が減少、南米の乾燥した地域では、農地の塩類化と砂漠化により、農作物や家畜の生産力が減少するなど、食料安全保障に悪影響を与えています。
上記のような被害はほんの一部であり、地球温暖化によって、これまでとは気象条件が大きく変わっていくことで、各地であらゆる問題が起こると考えられます。
住まいへの被害
異常気象は、食料だけでなく住まいへも大きな影響を及ぼします。
異常気象によって雨の降る時期が長引くと、河川に近い住宅は河川の氾濫によって床下や床上浸水、最悪の場合は住宅ごと流されるといった水害の可能性が高くなります。
また、降水量が増え、降水時間が長くなると、雨水が地面の奥まで浸透し、表面の土砂が流れ出し、地盤を支える岩盤もろとも山全体が崩れ落ちる深層崩壊という大きな土砂災害も起きやすくなります。
近年では、2009年8月に「モーラコット台風」が台湾を襲った災害が思い出されます。この台風の影響で豪雨が続き、高雄縣甲仙郷小林村で発生した深層崩壊、天然ダム決壊の1事例で 400名以上が亡くなる深刻な事故が起こりました。
この他にも、異常気象によって生じる干ばつや洪水が住環境に深刻な影響を及ぼしている例は多数確認できます。
健康被害
異常気象は、私たちの健康にも大きな影響を与える可能性があります。
身近な健康被害を挙げると、高温が続くことによる熱中症や、高温多湿の環境から起こる食中毒などが今後さらに増えると予想されます。
また、大規模な健康被害としては熱波が危惧されています。もともと気温が高い地域はもちろん、比較的温暖であった地域でも発生するようになると、熱中症を始めとしたさまざまな病気により多数の死者が出てしまう恐れがあります。
現にフランスでは、2003年に記録的な熱波が全土を襲い、約1万5000人もの死者を出しています。
4.異常気象への適応が求められる
異常気象を解決するためには、根底の原因である地球温暖化を食い止める必要がありますが、地球温暖化対策では、すでに上昇した平均気温を下げることはできません。
そのため、今求められていることは温室効果ガス削減などにより地球温暖化を防ぐ取り組みを継続しつつ、並行して異常気象への適応も図るという両輪の対策を講じることです。
現に、日本では異常気象の影響が今後さらに拡大するのを見越して、これに適応するために国や自治体の役割を定めた気候変動適応法が2018年12月に施行されました。
同法では、高温耐性のある農作物の開発や堤防・洪水調整施設といったインフラ整備などが適応策として想定されており、異常気象の影響は地域ごとに異なるため、自治体には地域の実情に応じた対策の推進が期待されます。
5.まとめ
昔は稀だった異常気象が、温室効果ガスの増加など地球温暖化の影響により世界各地で頻発するようになったと考えられています。
また、異常気象の増加によって、農作物を始め人々の暮らしや健康面などにも目に見えて被害が拡大しています。
原因である地球温暖化への対策が解決への最善策ですが、効果が表れるまで時間がかかるため、異常気象に適応していくための策を講じるのも1つの手といえそうです。