森林伐採による絶滅危惧種の増加と対策
今、地球上では毎日100種以上の生物が絶滅していると言われています。
そのスピードは加速の一途をたどっており、100年前は年間1種程度だったものが現在は年間約4万種が姿を消しています。
気候変動や生物界の競争など絶滅の原因は多岐にわたりますが、もっとも大きな原因は人類による環境破壊、中でも森林伐採による絶滅は極めて深刻な状況になっています。
今回は、森林伐採による絶滅危惧種の増加とその対策などについてご紹介します。
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1.森林は生物の宝庫
森林は“生物の宝庫”と例えられるように、生物多様性を保全する上で重要な役割を担っています。
事実、多数の植物が生育し、それを餌とする多くの動物が集まることから、陸地に棲む種の3分の2以上が森林に生息しており、中でも熱帯林には、地球全体の50~90%の種が生息し、さらに3000万種以上の未記載種がいるといわれています。
森林伐採は生物の生息・生育適地を奪い、生態系を破壊し、数多の種の絶滅を招いています。
2.森林伐採により絶滅・絶滅危惧種が増加
世界の森林は、人口増加や経済発展などに伴う過伐採によって、加速度的に面積を減らしており、それに比例するように生物の絶滅・絶滅危惧種も増えています。
世界では、1年で1290万haの森林が減少していますが、その中でも再生が難しいとされる熱帯雨林が特に減少しており、毎日100種もの生物が絶滅しているといわれています。
そして、絶滅の危機にある種はそれ以上に増えています。絶滅危惧種に指定される生物を少しでも減らすために、直接的な原因である森林伐採への対策を早急に考えなければなりません。
3.絶滅危惧種の増加を防ぐための対策
現在のペースで生物が絶滅すると、25~30年後には地球上の全生物のうち、4分の1が失われる計算になります。
ここでは、森林伐採による絶滅危惧種の増加を防ぐ取り組みをご紹介します。
3-1.植林
絶滅の大きな原因は森林伐採により、棲み家が失われていることにあります。植林はそんな絶滅危惧種にとって大きな助けになります。
しかし、植林で生物の多様性を保護するためには、その地域に合った樹種の選定や綿密な植栽計画が必要です。また、植林後の森林管理も重要になってきます。
そのため、荒廃した森を果樹や木材などの生産林として再生する、森の修復が収入源となる仕組みづくりなど、地域経済への配慮や行政機関を巻き込む制度づくりが求められ、さまざまなプロジェクトが進められています。
ただし、熱帯雨林は植林で再生することはできません。非常に多くの樹種が混ざり合っていること、成長過程などが不明な樹種が多いこと、生態系との関連性が明らかになっていないことがその理由です。
植林と同時に、天然林や熱帯雨林の保護も積極的に行うことで、初めて絶滅の危機に瀕する生物を救うことができるのです。
3-2.4R運動の推進
個人ができるもっとも身近な対策は、「もったいない」に代表される4R運動(Refuse・Reduce・Reuse・Recycle)の推進です。様々な製品の原料や製造エネルギーに使われる樹木を減らし、森林伐採を減らすことができます。
Refuse不要なものは断る・Reduceゴミを減らす・Reuse再利用する・Recycle再資源化する
こうした意識を地球で暮らす1人1人が持つことで、確実に森林が伐採される面積が減少し、結果的に絶滅する生物や絶滅危惧種を減らすことができます。
3-3.違法伐採の取り締まり強化
世界中で横行している違法伐採の取り締まりも、森林を保全し、絶滅危惧種に指定される生物を守ることに寄与します。
違法伐採とはそれぞれの国の法律に反して行われる伐採で、インドネシアでは50%、ロシアでは20%が違法伐採という調査結果があります。その木材の多くは輸出用とされ国際的な問題となっています。
人の生活に欠かせない森林の伐採を完全にやめることはできませんが、持続可能な森林経営は目指せます。
それを阻害する違法伐採を厳しく取り締まることで、森林は守られ、生物を絶滅の危機から救うことができるはずです。
4.日本でも求められる森林保全
日本では、ここ50年で森林面積に大きな変化はなく、世界の森林伐採による生物の絶滅は遠いことのように感じられますが、国内でも2018年には3675種の絶滅危惧種が確認され、前年度より41種増加しています。
絶滅危惧種に指定されている生物のほとんどは、森林に生息または森林に影響を受ける生物であり、日本の生物保全のために、森林の適切な管理が望まれています。
林業の衰退によって放置された山林の整備や、天然林の保全、食害をもたらすまで増えてしまった個体の管理などを徹底し、本来あるべき森の姿を取り戻すことで絶滅に瀕する生物は守られるはずです。
5.まとめ
地球上の多くの生物が生息する森林の減少は、生物の絶滅や激減に直結します。
絶滅する生物や、絶滅危惧種に指定される生物をこれ以上増やさないために、積極的に森林の保全に努めることはもちろん、世界中の人間が当事者意識を持ち、リサイクルなど身近なことから実際にアクションを起こすことが求められています。