日本の森林伐採の現状と問題
森林伐採は地球環境問題の重要なトピックスとして、ニュースでも度々取り上げられています。
世界では1分で東京ドーム約2個分の森林が伐採されている、というデータもありますが、先進国といわれる日本ではどれほど伐採が進んでいるのでしょうか。
今回は、日本における森林伐採の現状や問題などについてご紹介していきます。
1.日本の森林は増減なし
まずは、日本の森林伐採の現状から見ていきましょう。
戦後の人口増加や産業発展、少子高齢化など森林の増減が考えられる変化はいくつもありますが、林野庁によると、日本の森林面積は1966年から2017年の約50年で、ほぼ同じ数値をキープしています。
森林面積の内訳を人工林と天然林で見ると、人工林の面積は793万haから1020万haと約2割増加しており、天然林の面積は約1割強減少しています。
森林面積がほぼ変わらないのは、天然林の減少を人工林が補っているからだといえます。
2.森林蓄積は年々増加
森林蓄積とは、森林資源量の目安のことです。
森林面積は長年横ばいですが、この森林蓄積は年々増え続けています。つまり、木材として活用できる木が増加していることを示しています。
実際、1966年から2017年までの51年間でみると、森林蓄積は約3倍に増加しています。また、人工林が占める森林蓄積の割合も3割程度から6割程度に増えています。天然林の伐採と並行して、植樹を行い森林保全に努めてきた成果といえるでしょう。
このように、日本には森林資源が充実していますが、森林面積が変わらず森林蓄積だけ増加しているということは、森林伐採の量が減少していることを表しています。
これは、海外の安価な木材の輸入増などを背景に、国内の森林伐採が減少し、活用できる森林資源を活用できていないという背景があります。
森林資源として利用できる木々を伐採せずに放置してしまうと、資源として使えない木々が残り、将来的には森林資源が減少してしまうと考えられています。
また、計画的に森林伐採が行われないと、様々な環境問題の引き金にもなります。
3.森林伐採の減少による環境問題
日本では、海外産木材の輸入増加により国内林業が衰退し、森林伐採を含む森林の手入れが進んでいません。
ここからは、森林伐採の減少から生じる環境問題についてご説明していきます。
地球温暖化防止機能の低下
森林は二酸化炭素を吸収し、酸素を排出する役割を果たしています。
一見、伐採しない方が地球温暖化の抑制につながりそうですが、樹齢の長い木が残り続ける伐採不足は、温暖化を加速させる恐れがあります。
若い樹木が生長している間は、光合成による二酸化炭素吸収量が呼吸の放出量を上回りますが、樹々が成熟すると二酸化炭素の吸収量が減り、排出する二酸化炭素量のほうが多くなります。
つまり、資源として活用できる大きさに成長した木を伐採せずそのままにしてしまうと、新たな植樹もできず地球温暖化防止機能は低下していくといえます。
また、樹木は二酸化炭素を吸収し、炭素として維持し続けますが、山火事で燃える、害虫に食べられて腐敗した場合、炭素は二酸化炭素に戻り、大気中に再び排出されます。
適度な伐採を実施することで、森林の環境が保たれ、こうした地球温暖化リスクを防ぐことも期待できます。
土砂災害の増加
伐採など森林の手入れが行われないと、土砂災害が増える可能性も高くなります。
手入れがされている森林は木々の間隔が空いているため、日光が地面まで降り注ぎ下草が成長できる環境が整っています。
しかし、手入れが行き届かなくなると、樹木の葉が生い茂り地表は暗くなり、草が生えず土壌がむき出しになります。
この状態で大雨が降ると、保水力が弱いむき出しの土壌は雨を吸収しきれず、雨水は地表を流れ山の土砂が滑り落ちるリスクが高まるのです。
また、雨は一度、葉の密度が高い樹々の上部に留まることになります。雨粒は、重みに耐えられなくなったところで下に落ちますが、通常の雨粒より大きな衝撃を地表に与えます。
これも、土砂災害のリスクを高めている要因です。
4.日本は積極的な木材の活用を
森林伐採の減少による環境問題を解決するには、豊富な森林資源を国内の住宅や製紙業などの市場に供給していくことが大切だと考えられています。
日本は1950年代まで木材自給率が9割以上であり、木材供給の100%近くが国産材でしたが、1964年の木材輸入自由化以降は輸入丸太、1970年代からは輸入製品や輸入燃料材が国産材を圧迫し、2002年には木材自給率が過去最低の18.8%まで落ち込みました。
2002年以降、木材自給率は回復基調にあり、2017年には36.1%まで増加していますが、輸入製品・輸入燃料材が木材供給量の過半数を占めている状況は変わっていません。
こうした状況を変える方法として、次の2ステップが望ましいとされています。まず第1ステップは、生長を終えた樹木を間伐し、若い樹木の生長を促します。次に第2ステップとして、間伐した樹木を紙やパルプ、産業用丸太などに積極的に活用するということです。
5.まとめ
世界では森林伐採が深刻化な問題となっており、植林などで回復に努めなければならない状態ですが、日本は状況が異なります。
日本では長年森林面積は変わっておらず、むしろ森林環境の整備のために森林伐採が必要とされています。
豊富森林資源はあるものの、木材供給は安価な輸入に傾いており、増えすぎた森林蓄積は土砂崩れなどの環境問題を引き起こしています。
国内森林の適度な間伐と、国内産業への有効活用が求められています。