世界の水質汚染対策と身近な対策
地球温暖化と同様に、世界的な問題として認知されている水質汚染ですが、世界そして日本ではどのような対策が進められているのでしょうか。
今回は世界や日本、そして身近な水質汚染対策について解説していきます。
目次 [非表示]
1.世界の水質汚染の現状
水質汚染対策についてご紹介する前に、まずは世界の水質汚染の現状を簡単に解説していきます。
「ミレニアム開発目標(MDGs)2015報告書」によると、1990年から2015年にかけて、安全な飲料水を利用できない人の割合は24%から9%まで減少していますが、途上国では急激な人口増加と経済発展による工業化で未処理放流が増加しています。
また、2016年に東北大学から発表された途上国の水と衛生に関するデータでは、9人に1人が安全な水が利用できず、毎年350万人が水起因疾病で亡くなっているとされ、途上国の病気の原因は80%以上が水の衛生環境の劣悪さによるものと結論づけられています。
2.世界的な水質汚染対策
まずは、世界で行われている水質汚染対策からご紹介します。
2016年にスタートした国際目標「持続可能な開発目標(SDGs)」により、世界的に水質汚染対策の取り組みが活発化しています。具体的には、SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」において、以下のようなターゲットを掲げています。
“2030年までに、汚染の減少、有害な化学物質や物質の投棄削減と最小限の排出、未処理下水の割合半減、およびリサイクルと安全な再利用を世界全体で大幅に増加させることにより、水質を改善する。”
出典:グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」ターゲット6.3より
この他にも水質汚染対策に関連する7つのターゲットがあり、それらの達成が、水質改善目標の達成にもつながると考えられています。
3.日本における水質汚染対策
世界的にはご紹介したミレニアム開発目標や持続可能な開発目標などによって、水質汚染対策の足並みが揃いつつありますが、日本ではどのような対策を講じているのでしょうか。
主なものを3つ見ていきましょう。
下水道整備による水質改善
目に見えて効果が高い対策とし、下水道の整備があげられます。
意外にも、日本全国の下水道普及率は79.3%であり、残り20.7%の未整備地域では何も処理されないまま、生活排水が河川や海に垂れ流されている現状があります。
下水道の普及している地域では、下水管の排水を綺麗にしてから河川や海に流す水再生センターも設置されています。これらを整備した下水道の普及率を1%でも押し上げることが、求められています。
河川の水質浄化対策の推進
日本では水質汚染対策として、昭和30年代以降継続的に河川自体の水質の浄化が行われています。
例えば、水量が少なく汚濁した河川では、清浄な河川水や高度処理水を導入する浄化導水、や河床に堆積した底泥を除去する浚渫(しゅんせつ)などが実施されてきました。
これらの施策によって、現在は多くの河川で水質が改善傾向にあります。
地下水の水質保全
いったん汚染された地下水の浄化は容易ではなく、多額の費用と年月を要することから、地下水ついては、未然に汚染の防止を図り、水質を維持していくことが重要です。
日本では、1970年から水質汚濁防止法に基づき、工場・事業場からの有害物質を含む汚水の地下浸透を禁止しています。
さらに2011年には地下水汚染の未然防止を図るべく同法が改正され、施設の構造などに関して基準の遵守や定期点検の実施を義務付けるといった措置がなされ、より徹底した管理体制が敷かれました。
4.身近な水質汚染対策
最後に、身近な水質汚染対策を3つご紹介します。
料理の無駄を減らす
まずは、料理の無駄をなくすことが、最も身近な水質汚染対策と言えます。
例えば、作りすぎてしまった味噌汁200㎖を台所から流した場合、汚れに強いコイやフナが棲める水質になるまでに、300ℓ(浴槽4.7杯分)の水が必要になります。
このように残った料理が毎日世界中でそのまま垂れ流され、水質悪化の大きな要因とされていますが、下水処理がなされるにしても大量の水が使われ、限られた水資源の無駄使いとなっています。
そのため、可能な限り食材は使い切り、買いすぎない、残さないといった意識を常に持つことが大切です。
生ごみなどを有効活用する
料理の無駄をなくしても、生活の中では少なからずごみが出てしまいますが、それを有効活用することも水質汚染対策になります。
例えば、生ごみは堆肥化してガーデニングに利用する、米のとぎ汁なども植木の水やりに使用すれば排水口から流さずに済みます。
こういったことを実践するだけで、水処理の水量を抑制することができます。
プラスチックの使用量を減らす
スーパーで食材を買うと、鮮魚や肉類、総菜はトレー、飲料はペットボトルに入れられ、購入後はポリ袋で持ち帰るのが一般的です。
プラスチックで作られたトレーやポリ袋などが適切に処理されずに河川や海に遺棄されてしまうと、水質を極めて悪化させる原因となります。
海洋に出たプラスチックは熱や太陽の光により砕かれて有害物質が溶け出し、水質を悪化させています。5㎜以下になったマイクロプラスチックは魚の体内にも取り込まれ、食材への蓄積も心配されています。
これ以上水質を悪化させないために、買い物にマイバッグを持参する、プラスチック製品は極力購入しない、ごみの分別を徹底するなど、日常からできる対策を、世界中の人々が意識し行っていく必要があります。
5.まとめ
ミレニアム開発目標に代表される世界的な取り組みによって水質汚染が改善している国もありますが、途上国では人口増加や工業化が加速し、水質汚染はなおも深刻化しつつあるのが現状です。
現在は持続可能な開発目標(SDGs)という新たな国際目標を掲げて、世界的な対策が進められていますが、地域の事情に即した効果的な施策をとるためには、国単位、個人単位の水質汚染対策が重要となります。