大気汚染物質“PM2.5”とは?発生源や影響を解説
一昔前は、ダイオキシンやアスベストなどが世間を騒がせていましたが、近年はPM2.5の話題が増えてきました。
このPM2.5の濃度が高くなると、さまざまな問題が生じると言われていますが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。
そこで今回は、PM2.5とは何か、発生源やその影響などについて詳しく解説していきます。
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1.PM2.5(微小粒子状物質)とは?
PM2.5とは、日本の主な大気汚染物質の1つで、大気中に浮遊する粒子状物質のうち2.5μm以下の大きさのもののことです。炭素や硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム、塩ケイ素、ナトリウム、アルミニウムなどで形成され、地域や季節などによって組成は変動します。
PM2.5は非常に小さい粒子のため、空気中に長く留まり、吸い込むと気管支や肺の奥深くまで入り込んでしまいます。
また、こうした物質は肺に接触する表面積が大きいほど有害作用も強くなるとされており、同じ重量の浮遊粒子物質(SPM)とPM2.5を比べた場合、より細かい粒子であるPM2.5の有害性が強く、呼吸器や循環器への影響も大きいと懸念されています。
2.PM2.5の発生源
PM2.5の発生源は、発生源から粒子として排出される「一次粒子」と、大気中で化学反応を起こして粒子化する「二次生成粒子」があります。
一次粒子の発生源は、焼却炉等ばい煙を発生させる施設や自動車、船、飛行機、越境汚染などが代表的です。
二次生成粒子は、火力発電所や工場などから排出される硫黄酸化物や窒素酸化物、塗料や石油などから蒸発する揮発性有機化合物が、大気中で光やオゾンと反応して生成されます。
3.PM2.5の影響
それでは、PM2.5がもたらす主な3つの影響についてご紹介します。
人体への影響
前章でご紹介したとおり、非常に小さい粒子が肺の奥深くまで入り込むため、まず影響が懸念されるのは呼吸器や循環器系の疾患です。
PM2.5の濃度上昇に伴い喘息や慢性閉塞性肺疾患などの患者は、咳や喘鳴などの呼吸器症状の悪化や肺機能の低下が起こったとされる研究があります。また、循環器疾患の関係が認められ、脈拍の増加、血圧上昇、心拍変動などが認められたという報告も存在します。
特に、子どもや高齢者、呼吸器や循環器系の病気を持つ人などは、環境省が定めた注意喚起のための暫定的指針「1日平均値70μm/㎥未満」をクリアしていても、健康に影響が生じる可能性があるため、体調に応じて慎重に行動する必要があります。
経済への影響
PM2.5は、世界経済にも大きな痛手を与えています。
世界銀行は、PM2.5を含む大気汚染の影響による経済損失は、512兆円を超えているという調査結果を公表しています。
大気汚染による経済損失は地域格差が激しく、産業発展が目覚ましい東アジアや太平洋地域ではGDPの7.5%、先進国であるヨーロッパでは5.1%、北米では2.8%相当と言われています。
また、南アフリカなどの発展途上国は経済損失が最も大きいとされています。電気が普及していないため、調理や暖房の焚火による家庭内のPM2.5が高いことがその原因とみられ、9割の人が汚染された空気の中で生活していると考えられています。
気候への影響
PM2.5は、時に気候にも大きな影響を与えることがあります。
一般的にPM2.5の濃度が高まると空が霞みがかりますが、これはPM2.5が太陽光を散乱させて起こる現象であり、この現象がみられる場所では太陽光が地上まで十分に届きません。
また、PM2.5などの微粒子に水蒸気が付着することで雲が生まれますが、微粒子の密度が高いと雲を構成する水の粒がさらに細かくなり、太陽光が抜けにくくなります。
すなわち、PM2.5の濃度が高くなると地上へ降り注ぐ太陽光が減り、地上の温度を下げる働きをするため、PM2.5の排出量を上手く制御できれば、温暖化による気候変動の緩和と大気環境改善の両方をコントロールできる可能性があると言われています。
4.PM2.5の気になる疑問
最後に、PM2.5の気になる疑問について解説します。
食の安全への影響
PM2.5が農産物に付着することは想定されますが、摂食による健康被害は、日本では報告されていません。
食品として摂取した場合は、体内への取り込み方が呼吸とは異なるため、気管支や循環器の発病リスクは限りなく低いといえます。
また、市販の食品にはPM2.5の成分である硝酸塩や硫酸塩などの無機塩が元来含まれており、大気中のPM2.5よりはるかに多い量を普段から口にしています。このことからも摂食によるリスクの低さが伺えます。
黄砂との関係
黄砂とPM2.5には因果関係があります。
黄砂は、東アジアの砂漠から舞い上がった砂が大気を浮遊しながら降下する現象です。
日本へ飛来する粒子は4μm程度の大きさが主ですが、微小な粒子も一部含まれているため、飛来したタイミングでPM2.5の測定値が上昇することがあります。
また、黄砂が飛来する過程で大気汚染が悪化している地域を通過した場合、汚染物質が黄砂とともに日本まで到達する場合があるので注意が必要です。
マスクは有効か?身近な対策とは
最も身近なPM2.5対策はマスクの着用ですが、有効性はマスクの性能に左右されます。
具体的には、一般の不織布マスクでもある程度の効果は期待できますが、医療用や産業用の高性能な防じんマスクは、微粒子の捕集効率の高いフィルターを使っており、PM2.5に効果的です。
ただし、十分な効果を期待するためには、顔の大きさに合ったものを空気が漏れないように着用することが大切です。
その他の身近な対策としては空気清浄機も挙げられますが、これもフィルターの有無や性能、機種によって効果は異なります。
濃度が前述の暫定的指針「1日平均値70μm/m³未満」を超えた場合には、窓の開閉をなるべく控え、外気を取り込まないようにすることが重要です。
5.まとめ
PM2.5は様々な場所で発生しやすい物質であり、粒子も非常に小さいことから、体の奥深くに入り込みやすい特徴があります。
そのため、ぜんそくや気管支炎、肺がんにつながる恐れもあり、多くの病気への影響が危惧されています。
身近な予防策としては、マスクや空気清浄機、注意喚起の指針に注意することなどがあげられますが、抜本的な解決を図るには世界的な取り組みが必要となります。
参考サイト
微小粒子状物質(PM2.5)の健康影響について 関根嘉香
https://www.jstage.jst.go.jp/article/siej/17/1/17_19/_pdf
風の街 よしだ外科・内科クリニック
https://www.yoshida-clinic.info/column/pm.html