すぐに始めたい工場の省エネルギー対策
省エネは、単に企業や団体にとってのコストダウンではありません。今や国策であり、国が積極的に導入を促している分野のひとつです。
省エネ化に取り組んでいる姿勢を示すことは、企業のブランド価値を高めることにもつながります。
今回は、すぐに始めたい工場の省エネ対策を紹介します。
目次 [非表示]
1.今求められる工場の省エネとは
2030年までの国際的な目標であるSDGsに則って、政府は
・省エネ、再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会の実現
・持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
など、8つの優先課題を掲げ目標達成に取り組んでいます。
実際、目標達成に向けて省エネ法や建築物省エネ法など多くの法律が施行され、徹底的な省エネ政策が実施され、導入を検討している企業や個人には補助金をはじめとした支援制度も充実しています。
2.工場の省エネルギー対策の基本
具体的にどのような省エネルギー対策を行えば良いのでしょうか。ここでは工場で実施可能な省エネルギー対策の基本をご紹介します。
光熱費の把握と見直し
まずは、自社工場の光熱費の見直しです。資源エネルギー庁の推計によれば、製造業における使用電力消費率は生産設備部門が83%、空調や照明など一般設備部門が17%となっています。
中でも、工場の利益に直結する生産部門での電力消費が大きな割合を占めているので、まずはこの部分の省エネ・コスト削減に努めましょう。
さらに踏み込んだ省エネ対策を行うのであれば、工場の屋根や倉庫の屋根といったデッドスペースを利用し太陽光発電などの導入を検討してみることも良い方法です。
単に工場の電気代を安くするだけでは、省エネ対策は不十分と言わざるを得ません。太陽光発電など自然エネルギーを利用した発電設備などの導入や、消費電力量そのものの軽減が求められます。
空調費用を抑える
夏場・冬場の空調は製品管理といった面だけでなく、従業員のモチベーションの維持にも重要な役割を果たします。省エネのために安易に空調費のみをカットすることは、かえって効率化の妨げになる可能性もあるため注意が必要です。
空調費用を抑えるためには、作業所をビニールカーテンで囲うなどの断熱対策や空調管理システムの導入が有効です。
予算との兼ね合いもありますが、空調費そのものをカットするのではなく効率的に空調を働かせる工夫をすることで、全体的なコストカットにつながります。
照明費用を抑える
照明費の見直しもコストの割にメリットの多い省エネ対策のひとつです。白熱灯をLEDに交換することで、電気代はもちろん夏場の冷房費も抑えることができます。
さらに、普段使用していない倉庫などには人感センサーを設置することで、無駄な電気代をカットすることもできます。
3.スマート工場(IoT)化を進める
近年よく耳にするようになったIoT(Internet of Things)ですが、工場でもIoTを推し進めることで、省エネ対策や生産性の向上につなげることができます。
IoT化された工場はスマート工場と呼ばれ、工場内にあるさまざまな機械のデータが数値によって可視化されます。集められたデータを活用することで、効率的に生産できるように各機械を制御することも可能です。
そうした作業はAIに任せることもでき、より高い生産性を実現することが可能です。
すでに世界では、製造業のIoT化が着々と進められています。ドイツの「Industrie4.0」を筆頭に中国の「中国製造2025」やアメリカの「Industrial Internet」などは、参考にすべき製造業のIoT化事例です。
製造業のIoT化に関しては遅れを取っていた日本ですが、2015年に「IoT推進コンソーシアム」が設立され、ようやく「日本版インダストリー」による生き残り政策が本格化し始めています。
政府による支援が充実している今が、IoT化へのチャンスかもしれません。
4.SDGsに基づいた省エネ支援の活用
省エネ化には、多くの費用が必要となるため、政府が様々な支援を行っています。
ここでは、それらの支援を詳しく見ていきましょう。
エネマネ事業者の活用による省エネ取り組み
一般社団法人「環境共創イニシアチブ・SII」に登録された事業者と共同で省エネに取り組む団体をエネマネといいます。
このエネマネと契約し、一定の基準を満たして省エネを達成した場合、設計費や設備費、工事費などの一部に補助金が支払われます。
ゼロ・エネルギービル・ポータル(ZEB PORTAL)導入支援
環境省が主導するZEB PORTAL(ゼロ・エネルギー・ビル・ポータル)にも補助金が支給されます。具体的には、年間のCO2排出量の削減のために導入した低炭素機器や新規設備などの導入資金が補助金の対象です。
ゼロ・エネルギー・ビル・ポータルは新規の事業所や工場建設以外にも既存の建物の改築、新たな設備機器の導入などに対しても対象になります。非常に多くの項目が対象になっているので、補助金が受けられるかどうかを一度政府のサイトで確認してみましょう。
ヒートポンプ等の省エネ設備の導入を支援
産業用ヒートポンプや業務用給湯器など、工場に欠かせない設備機器をより省エネ効果の高い機械に交換することで補助金が受けられる可能性があります。
対象設備は多岐にわたり、ボイラーやプレスなどの大型機械からLED蛍光灯や省エネエアコンまでさまざまな機器が対象です。
また、ハード面だけでなくソフト面での支援が受けられることもあります。
クラウドサービスを利用するなど、自社工場の省エネ診断や運用の改善案を実行した場合、導入費用の借り受けに際しての利子の補填といった支援が受けられます。
民間事業者等の再生可能エネルギー導入事業の設備導入に係る費用の一部を補助
企業に向けた改正省エネ法では、再生可能エネルギーに特化した設備を導入する際に支援を受けられます。
具体的には、自社で消費する電力を太陽光発電や地熱エネルギー、バイオマス発電といった再生可能エネルギーに変更することで補助金の対象になる可能性があります。
CO2の排出量削減による地球温暖化防止のほか、防災・減災などに役立つ再生可能エネルギー設備の導入についても支援の対象になる場合があるので、対応する行政機関等で一度確認してみましょう。
5.まとめ
工場の省エネ対策は、単なるコスト削減ではなく国策としても求められています。
実際、政府による支援も多く、それらをうまく活用することで大幅なコスト削減も期待できます。
基本的な省エネ対策に加え、設備の交換やIoT化など、様々な方向で検討していくことが重要といえるでしょう。