世界の女性差別の現状と未来~SDGsジェンダー平等を実現しよう~
男女平等が叫ばれて久しいですが、いまだに女性の身分が低い地域は世界各地に存在します。
持続可能な開発目標(SDGs)では、ジェンダー平等も大きな目標の一つに取り上げています。すべての人が平等に暮らせる世界を目指して、女性差別の現状や解決への課題などをご紹介します。
目次 [非表示]
1.SDGsゴール5、「ジェンダーの平等を実現しよう」とは
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)では、「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」ことが第5の目標に掲げられています。
エンパワーメントとは、権限や自信を与えるといった英単語であり、抑圧されることなく個人の重要性を認めるという意味合いで使われています。
この目標の中で、人身売買や性暴力の排除、児童婚や女性器切除などの有害な慣習の撤廃など、女性と女児に対するあらゆる差別を撤廃し、基本的人権を守ることが定められました。
これは女性だけのために設定された目標ではありません。女性差別がある社会では経済がうまく発展しないという事実があり、ジェンダーを超えた世界共通の課題といえるでしょう。
2.世界各地で起きている女性差別
世界では、どのような女性差別が行われているのでしょうか。
まずは、特に影響が大きいとされる4つの差別をご紹介します。
①.性暴力・虐待
男性に比べて非力な女性は、暴力を受けることが少なくありません。ユニセフによると、女性の3人に1人が性暴力の被害者であるというデータも発表されています。この性暴力の被害者は貧困地域、未成年での結婚が多い地域など、女性の身分が低い場所で多い傾向にあります。
性暴力は多くの女性を傷つけていますが、中でも女児を対象にした女性器切除という性的虐待が国際的に深刻な問題となっています。
これは、成人儀礼の割礼にあたるもので、アフリカを中心に多くの社会で行われており、2億人以上の女性が経験していると言われています。
女性器切除を受けると感染症や出血により死亡する可能性があり20カ国以上で廃止宣言が出されていますが、このままいくと2030年までに新たに約1億5,000万人の被害者が見込まれています。
しかし、2500年以上続く宗教上の伝統であり、完全な解決にはまだまだ時間のかかる問題です。
②.未成年の早期結婚
18歳未満での結婚を「児童婚」と呼びますが、ユニセフの調査では約7億5,000万人の女性が児童婚をしており、そのうち3人に1人が15歳未満で結婚しています。
児童婚は、就学・就労の機会が奪われる、若年出産で死亡する、パートナーから暴力を受ける可能性があるなどさまざまなリスクを含んでいます。
児童婚の割合はこの10年間で15%減少していますが、アフリカなどの地域では人口増加に減少率が追い付かず、ユニセフの調査によると、2015年時点と比べ2050年までに児童婚経験者は2.5倍に膨れ上がる見通しです。
③.雇用機会・賃金の不平等
女性は雇用の機会を与えられないことも多く、世界中の労働人口のうち、女性の数は3分の1に留まっています。
例えば、世界における女性の農地所有割合は13%、女性国会議員の割合は23.7%であり、あらゆる数字から女性の参画が進んでいないことがわかります。
また、女性の賃金は男性に比べて低いことも明らかになっています。国際労働機関(ILO)の調査によると、世界的に見ても女性の収入は男性の8割程度にとどまっており、賃金の完全平等を達成した国はいまだありません。
④.教育格差
教育環境においても女性差別は存在し、この傾向は高等教育になるほど拡大します。
例えば、世界の初等教育の就学率は男女に大きな違いはありませんが、中等教育では男子の就学率が65%なのに対し、女子は55%と差が開いています。
国や地域によって教育格差が生まれる要因は異なりますが、次のような事例が挙げられます。
・慣習的に女の子に教育は必要ないと考えられている
・女子トイレがないなど教育施設の設備が不十分である
・児童婚のために中等教育以上のことは無駄だと考えられている
この他にも、貧困により女子に教育を受けさせる余裕がない、通学経路に危険な地域があり女子を通わせられないなど、貧困や地域問題によるあらゆる背景があります。次章で詳しくみていきましょう。
3.女性差別の主な原因は文化的背景
世界にはさまざまな女性差別が起こっていますが、宗教や文化的要因が強く影響しています。
宗教的な問題
まずは、女性が不当な扱いを受ける宗教的背景について、イスラム教とインドのダウリー制度の事例をご紹介します。
世界経済フォーラムから毎年公表されるジェンダーギャップ指数(男女平等ランキング)では、イスラム教の国々が下位を占めています。イスラム教では女性は男性より身分が低いとされており、女性への暴力や経済的自立を妨げる要因の1つになっています。
また、ヒンドゥー教のダウリーという慣習もインドの女性差別において問題となっています。ダウリーは花嫁の実家が花婿に持参金や家財道具を送る慣習ですが、その金額は莫大なものであり、花嫁の家族が払えない場合は、自殺につながるような冷酷な扱いを受けることも珍しくありません。
現在ダウリーは法律で禁じられていますが、それにも関わらずインド北部では風習に今も色濃く残り、女の胎児の大量中絶など、大きな影を落としています。
家事は女性や少女が担うものという習慣
多くの国々で「家事は女性がするもの」という考えがあり、こうした習慣も女性の社会進出を妨げる要因になっています。
特に、男女の役割分担がはっきりしている貧しい国々では、女性や女の子が薪や水の運搬、食事作り、子どもの世話などを一手に担うため、家事をするだけで一日が終わります。
こうした地域では、家事に多くの時間が割かれることで、女性は学校教育や職業訓練を受けられず、雇用の機会があっても就労時間が確保できないなどの問題が生じています。
これは女性差別の強い地域に限ったことだけでなく、先進国で共働きをしている場合でも、女性は男性の2.5倍の時間を家事にあてています。
4.女性差別の撲滅に向けて
宗教や風習的な背景もあり、女性差別の意識を変えることは簡単ではありませんが、SDGsで女性差別が取り上げられるなど、世界ではさまざまな取り組みが始まっています。
例えば、国連のUN Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国際機関)が2014年から行っているHeForSheキャンペーンでは、ジェンダー平等達成に向けた支持を呼びかけています。
HeForSheキャンペーンではSNSでのシェアを通して200万人以上が参加しており、男性をはじめとした多くの人々に、ジェンダー平等に関する活動参加を促す一助となっています。
5.まとめ
世界には女性というだけで差別される人が大勢います。そのたびに女性は何かを諦め、時には命を危険にさらすこともあります。
SDGsの目標「ジェンダー平等」を達成するために、世界にある女性差別の現状や背景を知り、状況を改善するために、すべての人が協力して問題解決に向けて取り組みむことが求められています。