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世界の移住問題はなぜ起こる? SDGsの目標と移民の現状

世界の移住問題はなぜ起こる? SDGsの目標と移民の現状

昨今、国際的な問題のひとつになっているのが移住問題です。積極的に難民・移民を受け入れていた先進国も、さまざまな問題に直面しています。

SDGsの目標10では「人や国の不平等をなくそう」をテーマに、このような移民問題の改善に取り組んでいます。移民を取り巻く世界の情勢について見ていきましょう。

1.移民を守るSDGs「目標10.人や国の不平等をなくそう」とは?

SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」の中で、移民に関して次の4項目のターゲットが設定されています。

10-1. 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
10-4. 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
10-7. 計画に基づき良く管理された人の移住政策の実施などを通じて、秩序の取れた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
10-c.2030年までに、移動労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を超える送金経路を撤廃する。


このように、不平等な賃金、社会保障制度、危険な移動など移民やその予備軍が抱えている課題を解消し、移民の経済活動を支えることが明記されています。

これらの目標を達成することは、単に移民問題の解決だけでなく、世界の経済成長にもつながります。

次の章から、具体的な移民の現状や抱えている課題、解消するメリットについてご紹介していきます。

2.移民の移住理由

国連が公開したデータによると、2019年時点で世界の移民の総数は2億7,200万人とされています。国際移民が世界の人口で占める割合は3.5%に上り、これは世界第4位の人口を持つインドネシアに匹敵する数字です。

一般的に移民と言うと、祖国の情勢不安による生命の危機や生活の困難が原因と考えられがちですが、実は移民にもさまざまな理由があります。

求職

世界最大の移民排出国であるインドの海外移民数は増加を続けており、大和総研がまとめたデータによると1990年に684万人だったものが2013年には1,416万人となっています。これは、移民が多いことで知られるメキシコの1,321万人や中国の934万人を大きく上回る数字です。

インド系移民のもっとも大きな移住理由は求職であり、インドと先進国の所得格差、カースト制度などによる職業選択の不自由といった原因が考えられています。

貧困

国際移民を地域別に見た場合、サハラ以南のアフリカ諸国では、同じ地域内にある他国に移動するケースが目立ちます。

中央アフリカから南アフリカにあたる地域は、内戦が頻発する国際紛争地帯として知られており、被災による貧困が移民を増やす理由となっているのです。

政治不安や紛争

内戦などの政情不安や迫害によって国を脱出する人のことを「強制避難民」と言います。シリア、イラン、イラク、アフガニスタンなど、テロ活動や内戦が続く地域からの庇護希望者は後を絶たちません。

近隣のトルコは世界で群を抜く難民受け入れ国ですが、難民キャンプは定員をはるかに超え、9割以上の人々がキャンプ外で生活する状況になっています。

3.外国人の大量移住によって起こる問題

アメリカやヨーロッパを中心に、多くの国が移民を受け入れていますが、数十万人を超える移民の流入によってさまざまな問題が起こっています。

非正規移住

正式な移民条件を満たせない人は多く、非合法な入国方法による移民も数多く報告されています。それらは、人身取引や略奪的な密入国あっせん業者、雇用主からの虐待の要因となっています。

また、そういった問題が、移民政策に反対する団体のバッグボーンにもなっており、さらに受け入れ条件が厳しくなるといった悪循環を生み出しています。

所得・賃金格差

外国人労働者への違法雇用問題も発生しています。移民という弱い立場を利用し、明らかに劣悪な雇用条件や給料格差が横行している地域もあります。

労働内容が同じであれば、自国民と同等の雇用条件を提示するべきですが、苦しい思いをしている移民が数多くいるのが現実です。

社会保障

移民は、社会保障や医療保険を受けられないことが多く、結婚すらままならない国もあります。

たとえ移民が税金を納めていても、生涯その国に留まるとは限らない移民に対して、医療保険や生活保護などを適用することは、結果的に自国の負担を大きくするという考え方があるためです。

受入国の治安悪化

1992年、アメリカのロサンゼルスで起きた大規模な暴動は、アフリカ系移民に対する労働環境や、待遇をめぐる不満が爆発したことが原因だと言われています。

その国の言葉を話せない移民や不法に入国した移民が、受入国の住民と同じように働けず苦しい生活を強いられることは想像に難くありません。

4.移住問題を解決するメリット

移民政策には良い面もあります。ここでは移民が受入国にもたらすメリットについて考えてみましょう。

非正規移民の割合はわずかであり、多くの移民はきちんとした手続きを踏んでいます。彼らの目的は、新天地でより豊かで安全な暮らしをすることであり、多くの場合、受入国の人々に悪影響を与えるものではなく、良い影響をもたらしてくれると考えられています。

世界のGDPの10%近くを生み出す移民

国連広報センターによると、世界人口の3%を占めると言われる移民ですが、生み出すGDPは大きく、世界GDPの10%近くを占めています。

このことから、高い生産性を期待できるといえるでしょう。

現地経済への貢献

正式な手続きを経て入国した移民は、生活基盤をその国に移し、納税もしています。

移民の収入の85%は受入国内で消費されているとの統計もあり、地域経済へ貢献しています。

開発途上地域への送金

開発途上国などのために使われる公的資金を政府開発援助(ODA)と呼びますが、移民が自国にいる家族などに送金する金額は、このODAの3倍に達するという国連広報センターの試算もあります。

これは、開発途上国を救う、より効率的な援助資金としても注目されています。

労働力の供給

人口減少が問題となっている国では、労働力確保は重要な課題です。移民は少子高齢化などで不足した労働需要を埋めており、経済活動に欠かせない存在となりつつあります。

こういったことを踏まえて、ドイツやスウェーデンの移民政策をはじめ、世界では移民を受け入れる制度が整備され始めており、移民の人々との共生・共栄が叶う日も近いかもしれません。

5.まとめ

世界に2億7000万人いる移民がもたらす影響は大きなものです。不法入国や治安悪化など悪い面ばかりが報道されていますが、実際は、高い経済効果や人材不足の解消、開発途上国への援助にもつながり、世界的に見たメリットも大きいことが分かっています。

人や国の不平等をなくすSDGsの目標をもとに、移民を支える政策と理解が求められています。

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