工場の利益率を上げる在庫管理法とは
工場の利益率を上げるためには、在庫管理を最適な状態にすることが有効だといわれています。では、具体的にどのように改善すればいいのでしょうか。
今回は、工場の利益率を高めるために効果的な「5Sの徹底」、「適正在庫を知る」、「適正在庫の維持と改善」という3つの在庫管理のポイントについて解説します。
目次 [非表示]
1.工場の在庫管理の重要性
ここでいう在庫とは、原材料・仕入れ部品・設備の備品・消耗品の4つを指します。もし、在庫管理が不適切な場合、在庫不足により生産が滞るといった機会損失や、長期保管による材料の劣化で管理費用が流出するなどの事態を招いてしまいます。
在庫管理を徹底し必要最低限に絞ると、無駄な在庫品の購入・管理費用を省くことができます。浮いた資金を設備投資や人員確保などに回し、企業の運営に役立てることができます。こうした意識を社員全員が共有することが在庫管理の始まりです。
在庫をきちんと把握すれば、欠品による機会ロスだけでなく、無駄な在庫を抱えるリスクも低減でき、効率よく利益を上げる体制を作れます。
2.在庫のズレをなくす5Sの徹底
「在庫のズレ」が起こる要因は、伝票・在庫の紛失、入力ミス、期限切れ、生産ミス、盗難などの人的なものがほとんどです。
人的な原因をなくす対策には、在庫の全体量を明確化し、保管場所を効率的に使用できるようにする、5S活動が効果的であると言われています。
5S活動とは、生産現場を改善するために行う現品管理の基本的な考え方のひとつです。これから1つ1つ確認していきましょう。
①.整理
整理では、在庫を使いやすいように分類し、不要なものは処分します。さらに、整理基準についても明確にして言語化し、ムダなく整理できる体系づくりをします。
②.整頓
整頓とは、在庫を取り出しやすい場所や個数を確認しやすい場所に配置することです。例えば、保管棚にナンバリングをして一目で在庫の位置と数を把握しやすい状態にすると、データと実際の在庫を簡単に照合でき、取り出すときの作業員のムダをなくせます。
③.清掃
保管場所の清掃を徹底し、在庫を常に清潔な状態に保ちます。清掃により、在庫の状態を良好に保てる、ゴミによる火災を防げるなどの効果があります。
④.清潔
整理・整頓・清掃の3つのルーティンを日常化し、在庫を清潔に保ちます。
⑤.しつけ
工場内の整理・整頓・清掃・清潔に対する意識をスタッフ全員が共有し、常に適切な在庫管理が行われる体制を作ります。
3.適正在庫を知る
工場の利益率を向上させるためには、適切な在庫量の理解が大切です。必要なもの、不要なものを判断するためのポイントを見ていきましょう。
製造スケジュールと必要数を把握する
完成するまでの期間と、商品の製造に必要となる資材の数を把握します。
いつまでに何の資材がどれくらい必要なのかを判断し、無駄のない注文スケジュールを組む参考にします。
現品管理をする
次に、今ある在庫の数を確認します。在庫の種類・場所・数を把握して、仕入れの重複防止や効率的な在庫補充に役立てます。
さらに、管理者だけでなく、発注に関わるスタッフ全員が現品管理できるシステムを作り、在庫を確実に把握してムダをなくします。
在庫回転期間を知る
在庫回転期間とは、在庫をどのくらいの期間で販売し現金化できるかを示す数値です。在庫回転期間は次の公式で求められます。
在庫回転期間=棚卸資産の合計÷年間売上高
※棚卸資産…原材料から完成品までを含む、商品関係の在庫
在庫の回転期間を算出すると、原材料の発注日を推測できるため、適切なスケジュールで効率的に在庫を補充できます。
4.適正在庫の維持と改善
適正在庫を理解したら、その基準を維持し、需要・生産状況に合わせて改善していきます。
適切な在庫量を維持するには、先述した5S活動・現品管理の徹底や、在庫回転期間の把握が重要です。これらを継続すると需要の予測が立つため、適切な在庫量を見直しつつ、欠品を防ぎながらも余剰在庫の削減が可能になります。
適切な在庫管理を継続させるために、以下のポイントを確認しましょう。
・販売計画に沿った在庫管理を行うために、社内全体で情報を共有する。
・適正在庫の基準は固定化せず、生産状況に合わせて常に見直す。
・在庫の発注・管理はスタッフ全員ができる環境を作る。
・在庫管理をデータ化し、今後の仕組みづくりに活かす。
以上のポイントを自身の工場にあてはめて実施することで、過剰在庫による資金圧迫や在庫不足による売り逃しを回避し、利益を生み出せる体制へと変わっていくのです。
5.まとめ
工場の利益率を向上させるためには、在庫管理の見直しを図ることが近道です。
整理・整頓・清掃・清潔・しつけを行う5S活動の徹底や、適正在庫の把握・維持・改善により、機会損失や経費を削減して利益率を上げていきましょう。