開発途上国への支援から見るSDGs~目標17.パートナーシップで目標を達成しよう~
資金が乏しい途上国が自国の力だけで発展することは難しいため、先進国が資金や技術、スキルといった様々な側面から支援を行っています。
その一環として、SDGsでは先進国から途上国への支援内容を具体的に定め、達成すべき目標を提示しています。
今回は、SDGsで明記した途上国への支援内容と支援に関する途上国の現状、支援に重要な役割を果たしている政府開発援助(ODA)に関してご説明します。
目次 [非表示]
1.SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」とは
持続可能な社会の実現のために、国際社会の課題を解決しようと策定されたSDGsには、目標が17個設定されています。
そのうち1~16までの目標を達成するために、先進国が開発途上国へ支援すべき内容を定めたのが目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」です。目標17は19ものターゲットを設定しており、そのターゲットを通して目標1~16の達成を支えています。
19のターゲットは手段別に7つのグループに分けられますが、中でも「資金」「技術」「能力構築」に関するターゲットには以下のようなものがあります。
<資金>
・課税及び徴税能力の向上のため、国内資源の動員を強化する。
・開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。
<技術>
・科学技術イノベーション(STI)へのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。
・開発途上国に対し、有利な条件下で環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。
<能力>
・すべての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、開発途上国の能力構築に対する国際的な支援を強化する。
※これらは各ターゲットの要約です。
「資金」「技術」「能力構築」に関する途上国の現状や支援状況を見ていきましょう。
2.開発に必要な資金が不足する途上国
国家が成長するには莫大な資金が必要ですが、多くの開発途上国では十分な資金が用意できず、国家の成長が効果的に行われていません。
資金不足が深刻な途上国の状況を見ていきましょう。
途上国の資金・徴税能力の不足
国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した報告書によると、SDGs達成のために必要な資金は年間約5兆ドル~7兆ドルといわれ、開発途上国に絞ると年間約3.2兆ドル~4.5兆ドルの投資が必要になるとされていますが、実際の投資額は年間約1.4兆ドルにとどまっており、深刻な投資不足が指摘されています。
実際、開発途上国では税金の徴収能力が低く、資金力が乏しい国が多く見受けられます。そのため、国連が推奨しているGDPに対して税収が20%以上ある状態には届いていません(参考:経済協力開発機構(OECD)加盟国では概ね30%を超えている)。
重債務貧困国(HIPC)の現状
HIPCとは、多額の債務に苦しむ貧困な後発発展途上国を示す言葉です。HIPCは銀行からの債務繰り延べや帳消しといった救済措置を受けていますが、1996年には31カ国だったのに対し、2014年には39カ国に増えています。
HIPCに該当する国はアフリカに多く、国民の貧困にもつながる人道的な問題であるとして、国際的な債務削減戦略が求められています。
3.デジタル技術の普及状況
現在、恐るべきスピードでデジタルテクノロジーが進化し、世界中の情報がネットワークで結ばれつつあります。インターネットは生活に不可欠な存在となり、利用者数は増加傾向にありますが、未だにデジタル技術の恩恵を享受できない人たちがいます。
デジタル技術に関する世界の現状を見ていきましょう。
世界のインターネット使用者数
デジタル技術の中でもとりわけ情報技術通信(ICT)の普及は、先進国だけでなく開発途上国や新興国でも急激に進んでおり、世界的にみて普及が遅滞していると言われていたアフリカでも、インターネット利用者の数は2015年から2018年にかけて倍増しています。
それでも、総務省によると、アフリカでのインターネットの人口普及率は25.1%と低く、4人に1人しかインターネットを利用できていません。
世界的に見ると、人数にしておよそ40億人以上がインターネットを利用できない環境で生活しており、そのうち90%が開発途上地域で生活しています。
モバイルマネー・サービスの広がり
総務省のデータでは、2013年時点における世界での携帯電話普及率は94.4%と高く、最も普及率が低いアフリカでも84.7%と大きな差はありません。
そのため、インターネットではなく電話回線を利用したモバイルマネー・サービスがアフリカで順調な広がりを見せ、2007年にスタートしたケニアのモバイル決済サービス(M-PESA)が急速に普及を始めています。
M-PESAは、銀行口座を持たずに携帯電話でお金をやり取りできるサービスで、その手軽さから多くのユーザーを獲得してきました。InfoComニューズレターによると、ケニアでは3人に1人しか銀行口座を持てない中、成人の74%がモバイル送金を利用しているとされています。
4.変わりつつある途上国への支援の形
「能力構築」については、各国固有の問題が大きいため、その支援状況から現状をご紹介します。
世界的に見ると、先進国は北半球に多く、途上国は南半球に多いことから、この経済格差を「南北問題」と呼んでおり、途上国への支援は北から南への南北協力が一般的でした。
現在では先進国から援助を受けた途上国が同じ途上国に支援を行う「南南協力」が増加しているため、これらの先進国・開発途上国・開発途上国による関係を三角協力と呼んでいます。
南南協力を行う途上国同士は言語や気候、環境が似ているため技術移転を行いやすく、支援を受ける側に立っていた国が援助国としてのノウハウを得られるため、自国の発展にもつながるといったメリットもあります。
例えば、日本は円借款によりモロッコに技術提供を行っていましたが、現在、モロッコはアフリカ諸国に技術研修を行っています。このように技術提供を受けた国が、支援を必要とする国に研修を行う構造が三角協力につながっています。
5.必要とされる政府開発援助(ODA)
これまで見てきた「資金」、「技術」、「能力構築」に関する途上国への支援の形に、ODAがあります。
最後に、現在のODAに関する取り組みについて確認していきましょう。
政府開発援助(ODA)とは
ODAとは、開発に必要な資金、技術、能力などを開発途上国に対し提供する取り組みのことで、政府や政府関連機関が主体となって行う活動を指します。
世界規模で見る政府開発援助(ODA)
1970年に国連総会はODAの目標値を国民総所得(GNI)の0.7%と定め、現在はおよそ半分のレベルまで到達しています。
国際連合広報センターの発表によると、2014年のODA総額は1,352億ドルと過去最高の水準に達し、中でもデンマーク、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの5カ国が目標値を達成しています。
金額面での最大の援助国には、フランス、ドイツ、日本、イギリス、アメリカの5カ国で、日本が途上国へ行う支援は決して小さくないことがわかります。
日本が行う政府開発援助(ODA)
総務省は、2018年の日本によるODA支援額は141.7億ドルで、世界第4位であると発表しました。ただし、GNIに対するODAの割合は0.28%と、国連が掲げる0.7%の目標値には届いておらず、今後のさらなる援助が期待されています。
日本の主な支援先は、アジア諸国が半数近くを占めており、次にアフリカ、中東が多い状況です。
具体的には、インドへの有償資金協力でインフラ整備を促進、イラクには人道支援や石油産業に対する技術協力、バングラディシュには交通インフラの整備や安全な水の供給、母子保健といった社会基盤の構築を援助しています。
6.まとめ
SDGsが16の目標を達成するためには先進国からの援助が不可欠です。最後の目標である17には、先進国が開発途上国を援助するための19個のターゲットが設定されており、資金、技術、能力などの援助を積極的に行っていくことを推奨しています。
そのためには、ODAを有効に使い後発開発途上国や重債務貧困国などに対し効果的な援助を行っていく必要があるのです。