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世界の金融制度を平等に SDGs~目標10.人や国の不平等をなくそう~

世界の金融制度を平等に SDGs~目標10.人や国の不平等をなくそう~

クレディ・スイスの調査によると、2018年に生み出された金融資産の82%は、たった1%の最富裕層に流入しています。

世界では、1990年以降の30年間で10億人以上が貧困を抜け出しており、貧困問題は少しずつ改善を続けていますが、依然として公正な金融制度は構築されておらず、金融資産の配分は不公平なままです。

本記事では、金融制度の平等を目指すSDGsをもとに、現在の不均衡な金融制度と求められる金融包括について解説します。

1.SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」とは

SDGsとは、国際的な問題を解決するために、193の国連加盟国によって採択された「持続可能な開発目標」です。全体で17の目標とそれを達成するための169のゴールが設定されており、2030年までの達成を目指しています。

10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」では、9つのターゲットが定められていますが、その中でも、今回は金融問題に関係する以下の2つのターゲットに絞って解説していきます。

10-5:グローバルな金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善する。
10-6:地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させる。

※一部抜粋・要約

なぜ、金融市場の規制やモニタリングを改善する必要があるのでしょうか。また、国際経済における途上国の立場はどのようなものなのでしょうか。次章から詳しく見ていきましょう。

2.世界の金融制度が不平等だといわれる理由

2014年に発表された世界銀行の統計によると、世界の口座保有率は62%に過ぎず、4割近い人々は口座を持っていません。現況の不平等な金融制度は、世界の経済成長率を引き下げ、所得格差を助長しているといわれています。

今の金融システムが不公正であるといわれる主な要因を4つ解説します。

地域格差

先述した世界の口座保有率ですが、先進国に限って見てみると、成人の94%が口座を保有しているのに対し、途上国では54%と成人の半分程度しか口座を保有していません。

教育環境が整備されていない開発途上国では、銀行や金融に関する知識、信頼が乏しい上に、簡単に利用できる金融商品やサービスが少ないことが現実です。

また、金融市場のルールや決済システムなどの金融インフラが十分に整っていないため、金融サービスにアクセスしたくてもできないものと考えられます。

所得格差

国際NGOオックスファムが2019年に発表したデータによると、超富裕層26人により世界の総資産の約半分が所有されています。その額は、所得下位半数にあたる貧困層38億人の所得に匹敵し、経済格差が露見する結果となりました。

所得や資産の格差が拡大する理由は多岐に渡りますが、主な要因は以下の通りです。

・賃金上昇率や労働分配率の低下
・先進国における社会保障制度の衰退
・開発途上国における未熟な社会保障制度
・税制上の課題(富裕層の税制優遇など)
・急速な技術革新
・無計画な金融緩和

ジェンダー格差

開発途上国では、性別によっても金融サービスへのアクセスに偏りがあります。

国際連合広報センター(UNIC)の調べでは、男女の所得格差のうち30%が世帯内部の不平等によるものとしています。途上国において女性の社会進出はあまり進んでおらず、家庭内での差別は経済的にも、社会的にも大きな打撃を与えているのです。

2018年の世界銀行の調査から地域別に男女の口座保有率を見てみると、中東・北アフリカ地域では、男性の口座保有率52%に対し、女性は35%にすぎません。世界的に見てもジェンダー格差が最も顕著に表れた地域であると言えます。

マイノリティー差別

移民や難民、先住民族といったマイノリティーは、差別により社会から孤立しており、金融システムの恩恵が及んでいません。

経済活動に参加できる機会が少ないマイノリティーが金融制度の恩恵を得られるように、金融サービスを使用できるチャンスや経済的に不安定な状況の改善、金融サービスへのアクセスの許可などを実現する法律の整備が求められています。

3.金融制度改善のために開発途上国の発言力を強化

金融制度の不平等を改善するためには、まず金融インフラそのものが整っていない開発途上国の成長を優先することが近道です。

途上国の金融市場の成長を促すためには多くの支援が必要ですが、大きな伸びしろがある分、援助には高い信頼性と公平性が求められます。

そのため、世界銀行をはじめとした国際的な金融制度に関係する組織は、開発途上国自身が自ら意見を発し決定できる、より健全な環境を整備するよう取り組んでいます。

一方で、国連統計部(UNSD)の2018年のデータによると、開発途上国のうち、国際機関に加盟している国の割合は、世界銀行、国際通貨基金で74.6%、世界貿易機関で71.95%、国際連合経済社会理事会で66.67%と、概ね7割に留まっています。

開発途上国の事情を汲み取った金融システム構築のためには、より多くの途上国が参加できる環境づくりが急務といえるでしょう。

4.世界の金融制度を平等にする「金融包括」を

SDGsを通して行われる金融制度の平等に向けた取り組みは、「金融包括」の推進に直結しています。

金融包括とは、脆弱な立場の人々を含め、すべての人が金融サービスにアクセスでき、利用できることを指す言葉です。金融包括に向けた取り組みの例として、少額融資やマイクロ保険などが考えられます。

しかし、金融制度の不平等は根深く、金融包括は簡単に達成できるものではありません。不平等の要因は数多くありますが、大きく国内と国際間の問題に分けられ、それぞれで対策する必要があります。

国内の問題においては、貧富格差や男女間の所得格差の対策として、教育・保険サービスの提供による経済的機会の不平等是正、税や財政支出による再分配が有効とされています。

一方、国家間の問題では、移民への対処や金融の適正化によって経済的機会の平等を担保し、政府開発援助(ODA)や直接投資により資源を再分配することが必要だといわれています。

5.まとめ

国際経済における途上国の人々の立場は脆弱であり、SDGsでは彼らが金融システムに平等に関われる国際社会を目指しています。

世界の金融制度が不平等だといわれる背景には、地域や所得、ジェンダーによる格差、マイノリティー差別などがあり、世界の経済成長率を引き下げる要因となっています。

そこで、途上国が金融制度の改善に積極的に携われるよう、国際機関に参加する途上国の割合を増やす環境整備が進んでいますが、加盟国割合は未だ約7割と高くはありません。

そうした状況下で、あらゆる人が金融サービスを利用できる「金融包括」を実現するためには、途上国に向けた公平で信頼できる援助・支援がカギとなります。

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