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開発途上国のエネルギー事情とマイクログリッド SDGs~目標7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに~

開発途上国のエネルギー事情とマイクログリッド SDGs~目標7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに~

2017年の国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、電力を使えない人々は世界に約10億人。ガスなど電力以外のエネルギーまで含めると、14億人が近代的なエネルギーのない生活をしているといわれています。

それらのほとんどが開発途上国に住む人々であり「未電化」という状態が、環境問題、健康被害、発展の妨げなど様々な弊害を招き、貧しさに拍車をかける原因となっています。

そんな問題に立ち向かうために、持続可能な世界を目指すSDGsでは7番目の目標の中で「開発途上国のエネルギー問題」に触れています。

今回は、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、開発途上国のエネルギー問題と世界の関係、クリーンエネルギーの可能性、新たなエネルギー手法「マイクログリッド」について解説します。

1.SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とは

持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals」)」とは、2015年に国連サミットで採択された国際目標です。世界が持続可能な社会を実現するために、達成すべき17分野の目標と169個の具体策(ターゲット)が設定されています。

開発途上国のエネルギー問題は、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のターゲット7-bに記されています。

7-b:2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

ここにある「後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国」とは、開発途上国の中でも特に貧しい国々で、様々な事情から電力を得ることができず、多くの人が薪などの原始的なエネルギーに頼って生活しています。

SDGsでは、途上国のエネルギー問題を世界の問題と考え、先進国にエネルギーサービスの拡充支援を行うように促しているのです。

2.開発途上国のエネルギー問題は世界の問題

電力やガスなどを思うように使えない「エネルギー貧困層」は、金銭的な貧困地域でもある開発途上国に集中しています。近代的なエネルギーがないままでの発展は難しく、世界経済の停滞にも直結するといえます。

まずは、エネルギー貧困層が集中する地域と、エネルギー貧困の影響、その原因を詳しく見てみましょう。

エネルギー貧困層は途上国に集中

2017年のIEAのデータによると世界の未電化人口は約10億人。その60%はサハラ以南アフリカ、17%はインド、その後はバングラデシュ、インドネシア、ミャンマーなどアジア地域が続き、開発途上国が未電化人口の9割以上を占めています。

ガスや電力が自由に使えない地域では、薪やワラ、家畜のフンなどを燃やして炊事や暖房にしており、燃料を集める労力や煙だらけの室内、灯油の悪臭などが様々な悪影響を及ぼしています。

エネルギーの貧困によって起こる問題

例えば、原始的な燃料である薪やワラは、燃やすことで二酸化炭素(CO2)や有害物質を排出します。これは、室内空気汚染や地球温暖化などの原因になっており、人体や環境に悪影響を与える深刻な問題です。

こうした暮らしでは、多くの子供たちは一日に何時間も薪集めをしなければならず、満足に学校へも行けず、教育に遅れが出てしまいます。また、日没後の生産活動ができないこともあり、途上国の経済発展の鈍化に拍車をかける結果となっています。

開発途上国にエネルギー供給が進まない原因

途上国でエネルギー供給が進まない主な原因は次の3つです。

・供給設備の建設費により供給コストが割高である
・現地の消費者も政府も貧しく、費用を負担できない
・費用が巨額になるため政策的にも維持・持続が困難

途上国は辺鄙な場所や海上の島々である場合が多く、既存の発電施設から遠く離れているため、新たな発電設備や送電線の長距離設置が不可欠で、巨額な資金が必要になります。

通常であれば、電力にかかる費用は消費者が電気代として支払いますが、途上国の人々や政府は貧しく、とても払うことができません。また、設備を維持するためには予算と教育が必要ですが、大きな発電施設と広い地域に張り巡らせた電線を長期にわたってメンテナンスする政策資金の用意も難しいのです。

こういった事情から、途上国は長い間未電化であり経済発展も進まない状態ですが、近年では電力供給に関する様々な技術開発が進み、状況が変わりつつあります。

3.開発途上国に眠るクリーンエネルギーの可能性

実は、豊かな自然と広大な土地を持つ途上国には、クリーンエネルギーの大きな可能性が眠っており、様々な効果が期待されています。

豊富なエネルギー源

クリーンエネルギーとは、太陽光、風力、地熱など環境負荷が少ない再生可能なエネルギー源を利用した発電方法です。

現在エネルギー貧困に陥っている開発途上国のほとんどは、自然由来のエネルギー源が豊富にあります。こうした再生可能エネルギーは、大規模な設備が不要というメリットもあり、すでに多くの取り組みが始まっています。

例えば、インドネシアには世界最大といわれる2万7,000メガワットの地熱が眠っており、政府は地熱エネルギーの有効活用に向けた政策を掲げ、国際協力機構(JICA)がそれを支援しています。

また、南アフリカでは96ギガワット規模の太陽光発電所が稼働を始め、ケニアではトゥルカナ湖に吹く強風を利用した大規模な風力発電プロジェクト計画が進行しています。これにより200万世帯への電力供給が見込まれており、世界の有力企業が巨額な投資をしています。

分散型オフグリッド発電の普及

送電線を必要としない自家発電システムは「分散型オフグリッド発電」と呼ばれ、地方の村や島嶼地域への送電コスト問題の解決になると普及が進められています。

特に、太陽光を利用するソーラーシステムは、これまで家庭用電源の主流だったディーゼル発電の半分の価格で設置できる上、石油利用やCO2排出量も抑えられるメリットがあり、利用が拡大しています。

未電化地域のエネルギーアクセスを低コストで実現するソーラーシステムは、住民の8割以上が電気を使えないボツワナやマリの農村部、フィリピンやミャンマーの無電化地域など世界各地で導入計画が進められています。

雇用の創出

14億人いるとされるエネルギー貧困層への電力供給は、地域雇用をはじめとしたあらゆる経済効果が出ています。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が2018年に発表したレポートによると、世界の再生可能エネルギー産業で働く人口は前年より70万人増加し、女性比率も高いと報告されています。

貧困地域に電気が通ることで地域の経済活動は活性化し、エネルギー産業以外の産業の発展にも繋がり、南アジアやアフリカでは37万人の雇用が生まれました。

再生可能エネルギー事業は発電システムだけではなく、そのあとに広がる電子家電やインターネット事業、金融事業など多くのビジネスチャンスが見込まれており、先進国や近隣諸国の企業もすでに投資をはじめています。

環境問題の解決

途上国への再生可能エネルギー普及は、環境問題の解決にもつながります。

森林伐採や薪・フンの燃焼による空気汚染、CO2排出が削減できるだけでなく、教育や生活環境の向上によって環境問題意識も高まり、海洋汚染や生態系の保全といった環境問題への現地住民の協力も得やすくなります。

また、雇用が生まれて地元経済が改善すれば、違法な伐採や狩猟行為なども減少します。

途上国のエネルギー問題は世界全体の問題であることは間違いありません。持続可能なエネルギーへの転換、世界経済の成長、環境問題解決のために、世界が足並みをそろえて取り組もうとSDGsは呼び掛けているのです。

4.途上国で活躍するエネルギー手法「マイクログリッド」とは

送電線を必要としない自家発電「分散型オフグリッド発電」の発展形に「マイクログリッド」という電力供給手法があります。

「マイクログリッド」とは、太陽光発電などの「分散型オフグリッド発電」に蓄電池や変電所などを設置した電力供給システムで、村や町単位の独立した小規模系統のものを指します。
※国や地域によって定義は異なります。

蓄電池や変電所の設置によって電力の安定供給や共有ができるだけでなく、台風や地震などの災害にも強いというメリットもあり、途上国ではそれを活用したプロジェクトが広まっています。

例えば、アフリカの未電化地域ケニアではアメリカの金融機関の支援によって2011年からマイクログリッド設備が設置されています。

太陽光パネルに夜間供給と需要コントロールができる蓄電池を設置し、全住宅に電力消費量と料金がわかるメーターを取り付けて、使った分だけプリペイド方式で支払う仕組みです。

また、先進国でも台風や山火事が多い地域などにディーゼルと再生可能エネルギーを協調運転するマイクログリッドを採用し、天候の影響を受けやすい再生可能エネルギーをサポートする体制が整えられています。

このようにマイクログリッド化することで、より充実した設備で効率的に利便性の高いサービスが可能になり、供給する側の事業リスクの低減にもつながっています。

5.まとめ

世界に電力などのエネルギーを利用できない人は14億人おり、その9割が開発途上国の人々です。

エネルギーが使えないために健康を害し、自然環境を損ない、経済発展もままならないという現状がありますが、その貧しさと地理的事情から電力を引けずにいます。

しかし、近年の再生可能エネルギー分野の発展に伴って発電コストは大幅に下がり、マイクログリッドのような地産地消方式の発電システムも構築されたことで、途上国にある太陽光、風力、地熱などを発電に活用する動きが高まっています。

雇用の創出や経済の活発化、環境問題の改善など途上国のエネルギー普及のメリットは大きく、各国政府や大手企業も支援計画を積極的に進めています。

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