液槽の配管とその周辺の配管のポイント
⼯場において、液槽やその周りの配管はとても重要です。液槽に対するポンプ位置によっては、流体の逆流やポンプの閉塞が起きる可能性があり、ライン稼働に⼤きな影響を与えかねません。また、万⼀そのようなトラブルが発⽣した際に、⼯場を稼働させながら機器のメンテナンスや交換を⾏えるよう、バイパス回路を正しく設置することも⼤切です。今回は、⼯場における液槽周辺の配管のポイントについて詳しく解説します。
⽔槽や油槽といった液槽周辺では、液⾯とポンプの位置に合わせてバルブを選び、正しく設置、使⽤する必要があります。液⾯に対するポンプ位置は⽬視でも確認できますが、今回は配管系統図を⽤いて解説します。
1.液面より下にポンプがあるときの配管ポイント
まずは、液⾯より下にポンプが設置されているときの配管ポイントについて解説します。
■ポイント①.チェック弁を設置する
ポンプが液⾯より下にある場合、ポンプを停⽌すると配管内の流体が重⼒によりタンクに逆流し、エア溜まりが⽣じる可能性があります。そのため、チェック弁をポンプ吐出側に設置することで、エア溜まりを防ぐことが⼤切です。
チェック弁は逆⽌弁とも呼ばれるバルブで、流体の逆流防⽌だけでなく、戻りウォーターハンマーを防ぐ役割も持っています。チェック弁には、スイング式、ウエハー式(ウイング式)、ディスク式、ボール式、リフト式の5種類があります。それぞれ構造や使⽤⽬的が異なるため、⼯場の配管状況やスペース、流体などによって最適なバルブを選ぶようにしましょう。
■ポイント②.仕切弁を「開」にする
仕切弁とは、流体を流す、あるいは⽌めるときに⽤いるバルブのことで、設備のメンテナンスや部品交換に備え、⼀時的に流体をストップさせるために配管の各所に設けられています。
ポンプ稼働時に仕切弁が閉鎖されていると、閉塞運転によりポンプが破損する恐れがあるため、ポンプの運転時は仕切弁を確実に「開」にしておきましょう。
フールプルーフ(ぽか防止)のためには、「バルブ開閉表示板」を取り付け、誤操作を防止する取り組みも必要です。
2.液⾯より上にポンプがあるときはフート弁がポイント
液槽の上部にポンプが配置されている場合、ポンプの動作を停⽌すると流体が配管からタンクに逆流してしまいます。そのため、チェック弁と同じ役割を果たすフート弁を取り付けて、逆流を防⽌することが⼤切です。
フート弁は、ポンプの吸込管側に取り付けるため、⽔槽中に設置することになります。
注意点として、構造上フート弁は正しい姿勢で取り付けないと正常に機能しない可能性があるため、必ず液槽に対して垂直に設置するようにしましょう。
3.液槽周辺では閉塞運転に気をつける
閉塞運転は機器の破損につながる可能性があるため、万⼀液槽周辺の循環経路が閉塞すると、ライン稼働に影響を及ぼしかねません。
そのため、閉塞する可能性が⾼い機器や閉塞した際の影響が⼤きい機器については、リスクヘッジが求められますので、詳しい⽅法を解説していきます。
閉塞する可能性が高い機器・・・フィルター(フィルター詰まり)、熱交換器(異物の堆積による詰まり)、バルブ類(異物噛み込みによる動作不良)
閉塞した際に影響が大きい機器・・・ポンプ(高単価、長納期、ライン自体の稼働がストップ)
■圧⼒計で差圧を管理する
フィルターやストレーナーは、詰まりを起こすほど⼊⼝側と出⼝側での圧⼒に差が⽣じるため、出⼊⼝にそれぞれ圧⼒計を設置して圧⼒をチェックしましょう。
差圧を管理することでフィルターの交換時期を正確に把握し、閉塞運転を未然に防げるようになります。
■リリーフ回路を設置する
熱交換器やフィルターなどは、リリーフ弁を設置したリリーフ回路を併設し、閉塞運転に備えることが有効です。
流体を迂回させられるため、閉塞を起こしても継続的に液体の循環を⾏えます。
■閉塞防⽌機能があるポンプを選ぶ
ポンプの内部にリリーフ回路を組み込んだポンプもあります。例えば、下図の配管系統図のオイルポンプは、1.0MPa以上でリリーフバルブが開き、リリーフされるものです。
重要な配管部分には導⼊を検討しても良いでしょう。
4.ライン停⽌を防ぐバイパス回路
通常、⽣産設備に使⽤されるメインの液体循環経路は、⽣産中は常時稼働状態となりますが、配管構成機器に不具合が⽣じた場合には、設備全体あるいはライン全体の稼働を停⽌せざるを得ません。そのため、不具合の発⽣個所が多い場所では、事前にバイパス回路を設けておくことで、全体の稼働停⽌をある程度防ぐことができます。
最後に、ライン稼働を⽌めずに構成部品を交換できる⼯夫を、3つの構成要素に分けて詳しく⾒ていきましょう。
<不具合が発⽣する可能性を想定することの多い構成要素>
ポンプ…流体の動⼒源のため、故障すると稼働ができなくなります。
フィルター、ストレーナー…詰まると経路が閉塞する可能性があります。
バルブ類(特に電動弁、電磁弁など)…故障頻度が⾼いため。
■ポンプ
ポンプにはスペアのポンプを併設しておくと、仕切弁を切り替えるだけですぐに復旧でき、設備稼働しながらメンテナンスもできます。
■フィルター、ストレーナー
フィルター、ストレーナーもポンプ同様に仕切弁の設置が有効です。両端に仕切弁を設置しておくことで、トラブルが発⽣しても稼働中にメンテナンスや交換作業を⾏うことができます。
また、ストレーナーと仕切弁の間にユニオンやフランジを⼊れておけば、メンテナンスが必要な機器ごと配管から取り外すことも可能です。
■バルブ類
電動弁や電磁弁などのバルブに関する不具合に備え、仕切弁を⽤いたメンテナンス⽤のバイパス回路を作っておくことをおすすめします。例として、設備冷却⽔の温調ラインで、三⽅弁(電磁弁)を使⽤しているケースを⾒てみましょう。
下記の配管系統図からは、冷却⽔を熱交換器に通して冷却しつつ、冷却⽔の温度が低くなると過冷却を防ぐために三⽅弁が切り替わり、熱交換器を経由せずに直接設備へ循環させていることがわかります。
この三⽅弁が故障した場合、三⽅弁の前に周囲に設けた仕切弁をすべて「閉」に切り替えることが有効です。あらかじめ作っておいたバイパス回路の仕切弁を「開」にし、流体を誘導することで、冷却⽔の循環を⽌めずに三⽅弁の交換作業ができるようになります。
5.まとめ
液槽周りの配管では、不具合を起こさず稼働させるために、バルブを活⽤することが重要です。
例えば、液⾯よりポンプが下にある場合はチェック弁や仕切弁の設置、液⾯より上にある場合はフート弁を取り付けるといったポイントを押さえると、トラブルを減らせるでしょう。
また、閉塞運転を起こさないためには、圧⼒計の使⽤やリリーフ回路の設置が効果的です。ただし、対策を⾏っても不測のトラブルが発⽣する可能性はゼロではありません。バイパス回路を作り、問題が⽣じてもライン稼働に影響を与えないようリスクヘッジをしておきましょう。