工場の安全を守る床塗装の種類と長持ちさせる秘訣
工場の生産性を高める方法はいろいろなものがありますが、環境を適切に整えるのも重要なポイントです。中でも、すべての作業スタッフが行き来する床の塗装改善は、工場運営に多くのメリットがあるといわれています。
今回は、意外と見落とされがちな工場の床塗装について、その重要性や塗料の特徴、改善依頼するときのポイントなどをわかりやすく解説していきます。
目次 [非表示]
1.工場の床塗装が重要な理由
工場の床なんて法令義務さえ守っていれば問題はない、などと考えていませんか。実は、きちんと考えられた工場の床塗装は、生産性を高めるだけでなく、そこで働く従業員の安全性向上や作業の効率アップにもつながるのです。
塗装が剥げ、ひび割れや凹凸が発生した床は、作業員の転倒や予期せぬ危険を招くだけでなく、搬送している資材や製品の破損の要因にもなります。
一方、現場に適した塗料できちんとメンテナンスされた床は、作業員の安全性を守り、製品の落下や薬品の被害を最小限にとどめます。また、区画を分けたラインを引けば通路と在庫の区分が明確になり、動線確保や整理整頓を促す効果も期待できます。
2.塗料の種類と特徴
一口に床塗装といっても、塗料の種類によって性質が違うため、現場への適正を考慮する必要があります。ここでは、代表的な塗料について、その性質や主な用途をご紹介します。
エポキシ樹脂
塗料のなかでも安価なエポキシ樹脂は、もっとも一般的に使用されている床塗装材のひとつです。
耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性、耐油性に優れ、仕上がりもシームレスで美観性や衛生面においても定評があります。帯電防止や耐熱などの機能性を兼ね揃えたものもあり、工場はもちろん、学校から病院まで幅広い施設で使われています。
多くの性能を持つ一方で、耐久性や耐熱性で他塗料に劣るというデメリットがあるため、工場に使用する場合は、2倍の厚みで塗装するのがおすすめです。
耐熱仕様でないエポキシ樹脂の場合、60℃までが対応温度となるため高温になる原料や機器を扱う工場には向きません。さらに湿度60%以上、もしくは0度以下の気温では施工できないため現場環境を見て適性を判断しましょう。
作業現場に使用できない場合でも、事務所や廊下などにエポキシ樹脂を利用してコストダウンする施設も多くあります。
<メリット>
・比較的安価
・フォークリフトの走行にも耐えられる強度
・コンクリート5倍近い耐摩耗性
・仕上がりが早く、施工翌日には使用が可能
<デメリット>
・耐熱仕様でない場合、60℃までしか対応できない
・耐久性がやや劣るため下地や用途によって厚みが必要になる
・湿度が60%を超える環境、0度以下の気温では施工できない
ウレタン樹脂
ウレタン樹脂はエポキシ樹脂よりもやや高価ですが、耐熱性、強度、耐久性に優れ、衝撃や薬品にも強い床塗料です。
弾性がありクラック(ひび割れ)の発生も少なく、工場などにおける重量物の移動や作業機器の設置にも長時間耐えられるため、機械や印刷、薬品工場の他、食品関連工場でも使用されています。
しかし、塗料自体の耐久性はあるものの、下地処理が不十分な場合は剥離が起こりやすく、ウレタン樹脂の種類によっては汚れが付着しやすいというデメリットもあります。
<メリット>
・エポキシ樹脂よりも強度、耐久性、衝撃性に優れている
・クラックが起こりにくい
・水性の場合、溶剤が必要ないため臭いが気にならない
<デメリット>
・下地処理が不十分な場合は剥離が起こりやすい
・湿度60%以上では仕上げ作業ができない
・施工翌日に現場を使用したい場合は、室温が15℃以上必要
・種類によっては、汚れが付着しやすい
アクリル樹脂
アクリル樹脂は塗料の中で最も高価ですが、エポキシ樹脂の5倍といわれる耐久性があり、高い耐摩擦性、耐薬品性、絶縁性に加えて、美観性も優れています。
また、施工後1時間程度で硬化するため、即日使用が可能であり、工場稼働のスケジュール面でも非常にメリットがある塗料です。アクリル樹脂塗料がよく使われる施設には、機械、印刷、食品、薬品関連の工場や電子機器などを扱うクリーンルーム、病院の手術室などがあげられます。
表面硬度や耐熱性においても高い性能を誇りますが、鋭利な物体の落下では傷が付きやすく、90℃以上の熱湯などがかかると膨れが生じやすいという欠点もあります。
<メリット>
・エポキシ樹脂の5倍程度の耐久性を持つ
・耐摩擦性、耐薬品性、絶縁性を持つ
・施工当日に使用が可能
<デメリット>
・鋭利な物体では傷が付きやすい
・90℃以上の熱湯がかかると膨れが生じる
・価格が高価である
3.床塗装を長持ちさせる3つの秘訣
常に衝撃を受ける床塗装は、壁や天井に比べて消耗や劣化が激しくなることは避けられません。少しでも塗装を長持ちさせるために、以下の3つの点に配慮しましょう。
① 塗料の下に水や油が入り込むと剥離の原因になります。油分や薬品が染み込まないように、濡れた場合はすばやく拭くことを意識しましょう。
② 毎日の清掃はもちろん、定期的なメンテナンスも大切です。小さな傷や穴から汚れや水が侵入すると、床材の劣化につながります。微小な傷であっても、見つけたらすぐに補修しましょう。
③ 通路と作業場などを明確にゾーン分けすることで、それぞれの環境にあった塗装を施すことができます。用途に適した塗装を選んで耐久力を持たせましょう。
4.業者に依頼するときのポイント
今回、説明した床塗装は専門の業者に依頼する必要があります。業者に依頼するときのポイントを見てみましょう。
工期を調整してくれるか
アクリル樹脂であれば1時間、その他の塗料であっても1日あれば使用できる状態になりますが、作業面積が広くなるほど完了まで時間がかかってしまいます。業者にもよりますが、通常、100㎡以上の塗装工事の場合、3日かかる場合もあるのです。
工場の稼働時間への影響を最小限にとどめたい場合は、夜間作業を行ってくれる業者や土日祝日などの作業ができる業者を探してみましょう。
下地処理を丁寧に行ってくれるか
下地になる床に凹凸があると、床塗料の剥離や耐久性の低下が起こります。塗装作業に入る前に、コンクリート下地をきちんと処理してくれる業者か確認しましょう。
また、床材と塗料をしっかりと固定するために、プライマーとよばれる接着剤のような下地剤を塗布するのですが、それぞれの塗料には、性質にあったプライマーが必要です。
下地の研磨やプライマーの使い分けなど、丁寧な前処理を行う業者を選ぶことが重要です。
工場の床塗装のノウハウを持っているか
一口に床塗装といっても、一般住宅や事務所、学校など生活が中心となる場所と、工場など重量物を扱う可能性の高い場所では、床塗装に求められる性能が違います。
例えば、印刷工場においては、各種溶剤を使用することから耐油性、耐薬品性が求められますし、病院や食品工場では、高い抗菌性や防臭性が求められるのです。
自社工場の条件にあった作業実績を多く持ち、的確な提案をしてくれる業者を選ぶようにしましょう。
5.まとめ
工場の劣化した床塗装は、凹凸などが事故の発生を招き、損なった美観が整理整頓の乱れにつながります。きちんとメンテナンスされた床は、工場の安全性や生産性の維持のために必要不可欠なものです。
床の塗料はそれぞれ特性があるため作業環境にあった塗料を選ぶことが大切です。また、定期的なメンテナンスも行い、床の性能維持に努めましょう。施工に際しては、工期調整や丁寧な下地処理、しっかりとした実績を持った業者を選ぶことが重要です。