人材不足が進む今求められる工場マネジメントとは
高品質、納期厳守を誇る日本の製造業は、海外からも長年高い評価を受けています。その一方で、製造現場は少子高齢化などによる人材不足という深刻な問題を抱えています。
人材不足の中で安定した工場経営を行っていくためには、業務の効率化やデジタル化など様々な工夫と、生産を維持しながら、それをこなす高いマネジメント力が必要となります。
今回は、いま工場マネジメントが求められる理由と必要なマネジメントスキルなどについて解説していきます。
目次 [非表示]
1.日本の工場に高度なマネジメントが求められる理由
2017年に行われた経済産業省の調査によれば、国内の94%の企業が人材不足を課題に挙げており、そのうち3割の企業では「すでに業務に支障をきたしている」と報告しています。
このような人材不足問題を解決するために、業務のデジタル化や働き方改革といったものが推奨されていますが、それらを推進するには、まず、管理者が現場状況をよく把握し計画的に業務環境を改善する必要があります。
しかし、すでに多忙な工場の生産管理を行いながら、新たな取り組みを行うのは並大抵のことではなく、今の工場管理者は非常に高いマネジメント能力が求められているといえます。
2.工場管理者に求められる3つのマネジメントスキル
日本の製造業は少ない人員で、中国や東南アジア諸国の低コスト・大量生産に打ち勝つために高い工場運営能力が必要になっています。いま工場管理者に求められる能力を3つに分けて解説します。
維持管理力
人材が十分でない工場運営において重要なことは、新人からベテラン、あるいは性別に関係なく、あらゆる人材が「安全に・正確に・遅延なく・もれなく」作業ができる環境の構築と、その維持です。
さらに、スタッフのモチベーションを維持するための教育や評価といった信賞必罰の仕組みづくりも重要になってきます。
人材、機器、材料、数量、工程、納期、予算が無駄なくスムーズに流れるように、工場全体を見渡しながら維持管理することが、工場の生産能力の礎になります。
変化点管理力
変化点管理力とは、「維持管理上で起こったトラブルに対応し、改善する力」を指す言葉です。
生産性を維持するために設定したルールや評価がきちんと機能していない場合には、その原因を突き止めて改善案を実行することが大切です。
例えば、1人だけルールを守っていない場合は、あらためてきちんと教えるといった対処をしていきますが、大勢に守られていないようであれば、守られない原因を探り、場合によってはルールそのものを修正する必要があります。
また、維持管理が軌道に乗るまでは、ルールの徹底などを人任せにせず、強いリーダーシップの元、管理者自らが指導することも重要です。
目標管理力
会社方針や経営計画から具体的な目標に落とし込み、それを達成する目標管理力も求められます。
多忙な工場マネージャーは、日々の業務に追われてやるべきことを先延ばしにしてしまいがちですが、問題を見過ごさず、現状とビジョンのギャップを常に把握して結果に結び付けなければなりません。
また、目標達成のためには、周りの人を動かすスキルも大切です。ただ部門目標や個人目標を棚卸ししてアナウンスするだけでなく、動機づけを行って従業員を動かす必要があります。時には、他部門の協力を仰ぐ機会もあるかもしれません。
月末だけ、期末だけといったポイントではなく、日々変化する状況をキャッチしながら目標達成へのプロセスを管理する必要があります。
3.工場管理者は「経営の視点」に立つことが大切
先程ご紹介したとおり、工場マネージャーは維持管理力、変化点管理力、目標管理力といったマネジメントスキルを身につけることが重要ですが、真に価値のあるマネジメントを行うには「経営の視点」に立ってスキルを発揮する必要があります。
例として、中期経営計画で「販路拡大」を掲げた企業があるとしましょう。工場マネージャーは販路拡大に合わせて生産効率を見直し、製造数の前年比110%増を達成しました。
原価低減にもつながり、一見すると優秀なマネージャーに思えますが、販路開拓前に行っても在庫や仕掛り品が増えるだけでキャッシュフローは悪化してしまいます。会社からすればキャッシュが減るという事態が生じているのです。
経営の視点からみて、工場に何が求められているのかを理解し、その上でマネジメントを行う必要があるといえます。
4.優れた工場管理者は経営数字に強い
会社の方針を理解して工場を導くマネジメントスキルと、経営の視点に立つこと。この2つを身につけるためには、経営数字に強くならなければなりません。
工場マネージャーは他部門への協力を要請する機会も多く、多数の利害関係を考慮した上で利益活動に貢献することが重要です。
原価や人件費などの経営数字を理解すれば、本来の工場経営に必要な「調達」「製造」「販売」といったサプライチェーンをどう構築すべきかが分かるようになります。
最低でも、財務諸表の基本であるPL(損益計算表)、BS(賃借対照表)、C/F(キャッシュフロー計算表)を正しく理解できるようにしておきましょう。
5.まとめ
人材不足や海外との競争激化が深刻な製造業では、デジタル化などが急速に進み、日本のモノづくりは変化を余儀なくされています。
その変化に対応しつつ、利益を上げるために、いまの工場管理者には非常に高度なマネジメントスキルが求められているのです。
期待されるマネジメントスキルは維持管理力、変化点管理力、目標管理力の大きく3つに分けられますが、どれも経営の視点に立ってスキルを発揮しなければなりません。財務三表を読み解く力を身につけ、真に会社に貢献する工場マネジメントを行いましょう。