工場の設備保全の仕事とは?保守との違いや保全方式を解説
工場で日々稼働する機械は、きちんと管理しないと劣化が進み、生産性にも影響を及ぼす可能性があります。
機械が期待される能力を発揮するためには、計画的に設備保全を行い、機械の健康状態を保っておくことが重要です。
そこで今回は、工場における設備保全の業務内容や、3つの保全方式について分かりやすく解説していきます。
1.工場の設備保全の仕事とは?保守との違い
工場における設備保全とは、設備機器を安全に長く使用するために、点検や修理を行う仕事のことです。
機械トラブルが起きないよう、機器の用途や状況などから点検時期・方法などの具体的な計画を立て、適切に実行する役割があります。
これによって機械の健康状態を維持し、性能低下による品質不良や突然の故障による稼働停止から工場を守る、重要な業務です。
機械保守やメンテナンスといわれることもありますが、厳密に言うと「保全」や「メンテナンス」は故障しないように管理するのに対し、「保守」は壊れたときに修理をするという違いがあります。
一般的に設備保全方式には、予防保全、計画事後保全、改良保全の3つがあります。それぞれの保全方式について、次章から詳しくご紹介します。
2.予防保全【保全方式1】
予防保全は、機械が壊れないよう前もって行う保全のことで、時間基準保全、状態基準保全に大別できます。それぞれについて、見ていきましょう。
時間基準保全
時間基準保全は、TBM(Time Based Maintenance)、周期保全、定期保全などとも呼ばれるもので、あらかじめ適切な周期を設定し、その周期ごとに部品の交換、修理などの整備を行う方式です。
一般的に周期は、「摩耗」「劣化」「腐食」といった要素を考慮して、同機種の過去の事例などをもとに決定していきます。
安全性を重視して保全の周期を短くすると、部品を寿命前に交換してしまう、正常状態で分解メンテナンスを行ってしまうといった可能性が出てきます。一方で、経済性を優先すると周期は長くなり、予期せぬ故障で製造ラインがストップし、重大な損失を被る可能性が考えられます。
適切な周期を設定しないと、かえって損失や事故につながる可能性があるため、時間基準保全を選択する場合は、慎重に周期を設定することが必要です。
状態基準保全
CBM(Condition Based Maintenance)、PM(Predictive Maintenance)ともいわれる状態基準保全は、機械の状態を監視しながら、劣化具合に応じて保全を行っていく方式です。
AIやIoT、測定器などの技術を活用し、設備の劣化兆候を常に監視、把握しながら必要な時に適宜保全を行います。
従来、日本では時間基準保全方式が中心でしたが、時期が来れば必要性が低くても保全を実施しなければならず、負担の大きさが問題視されていました。
状態基準保全であれば、測定器の導入やデータの分析技術などが求められるものの、最低限の負担で工場を安全に稼動できるメリットがあります。
3.計画事後保全【保全方式2】
予防保全とは異なり、機器が目に見えるほどパフォーマンスが低下した段階で、はじめて設備保全を行うことを計画事後保全といいます。
一般的には、機能停止型故障と機能低下型故障を起こした際に保全を実施します。
機能停止型故障は、文字通り機械が完全に停止して作動しない状況を指し、機能低下型故障は機能の一部が稼働しにくくなる、あるいは機能が低下する状態のことです。
予防保全は、安全性の高さがメリットでしたが、その分保全の機会が多くコストや労力負担が大きいという欠点がありました。計画事後保全では、劣化による安全性・生産性の問題が少なく、補修時間も短く済む設備であれば、寿命まで機械を使い切れるため、コスト面で優位であると採用されるケースが少なくありません。
しかし、すべての機器に事後保全を導入すると稼働上のリスクが大きいため、設備の重要度や故障時のメンテナンスの容易さを考慮して、適正だと思われる設備にのみ導入することが重要です。
4.改良保全【保全方式3】
改良保全とは、設備が故障したときに、今後トラブルが発生しないよう、設備自体を改善する方式です。
設備の寿命を延ばすために行う設計改善と、修理や点検の手間を省き、短時間でメンテナンスを行えるようにする設備改善とに分けられます。
改良保全では単に保全を行うだけでなく、故障の原因や機器の状態を分析し、今後の保全の手間を最小限に抑える目的があります。
改善費がかかりますが、その機械の保全費や故障による損失のほうが大きい場合に、採用されることが多い方式といえるでしょう。
5.まとめ
安全に工場を稼働させる上で欠かせない業務が設備保全です。設備保全では、機械が故障しないように点検スケジュールや方法を決め、実行します。
この保全方式には、機器の故障を防ぐために前もってメンテナンスを行う予防保全、目に見えて機能が低下したときに保全する計画事後保全、設備の健康状態を維持し、保全回数を減らすために設備自体を改善する改良保全の3つの方法があります。
それぞれメリット・デメリットがあり、機械によって適切な保全方式は異なるため、同じ工場でも機械ごとに適切な保全方式を見極めることが大切です。