工場の電気代削減は使用状況の把握がカギ!電気代の算出と削減の方法
工場の電力需要に関するアンケート調査(五十川他, 2013)によると、2012年8月の工場の電力料金は、従業員5人未満で10万円前後、従業員が300人を超えると約1,000万円にものぼるとしています。
円滑な工場経営を目指すためには、支出と歳入のバランスを適正に保つことが重要なポイントとなります。電気代は工場のランニングコストの中でも、特に比重が高く、常に念頭に置きたいものですよね。
今回は、工場における電気代の削減方法や具体的な電気代の算出事例などをご紹介していきます。
目次 [非表示]
1.工場の電気使用の内訳と傾向
資源エネルギー庁の資料によれば、一般的な工場の電気使用量の内訳は、生産設備が83%、空調9%、照明8%となっています。
もっとも電力使用の割合が高い生産設備を省電力化できれば手っ取り早いのですが、省エネ機器への一斉交換は膨大なコストと労力がかかり、現実的ではありません。
そのため、LED電球への交換や空調の効率化といった方法で、光熱費を抑えることが一般的でしたが、最近では、電力の自由化によって電力料金自体を下げることが可能になりました。
大きな労力もコストも不要で、確実な節電効果がある電力会社の見直しは、電気料金見直しの第一歩として主流になりつつあります。さらに、IoT化や自家発電による電力の効率化で、さらに大きな削減効果を生むことが期待できます。
2.工場の電気代を削減する方法
では、具体的に電気代を削減する方法を見ていきましょう。ここでは、LED照明への交換といった定番手法ではなく、電力使用量や電気料金自体を下げる方法をご紹介します。
電気使用量の見える化
現在の操業方法で使用している電気量の詳細把握は、節電の第一歩といえます。
「今月は稼働が多かったから多分このくらいだな」といった大まかな捉え方ではなく、「いつ、どこに、どれくらいの電気が使用されているのか」といった電気の使用状況がすぐに見られる環境を整備しましょう。
電気使用量の見える化は、無駄な消費電力を発見し、効率よく改善することに役立ちます。消費電力が大きい設備や集中稼働する時間帯などを調べ、電力の使用状況を詳しく把握しましょう。IoTを導入すると節電効果もいち早く確認できて非常にスムーズです。
電力会社の見直し
電力の自由化によって多くの新電力会社が参入し、自社にあった電力会社を選べるようになりました。
各社ともさまざまなプランを用意しており、上手くフィットすれば電気料金の大幅な値下げも可能です。1社に限定せず、定期的に電力会社やプランを見直すようにしましょう。
その際は、自社工場の稼働内容に適したプランや、工場経営に強みを持つ電力会社を選ぶのがおすすめですが、「契約期間」と「違約金」も合わせて確認することが重要です。
太陽光発電を取り入れる
工場の屋根や敷地の空きスペースを利用して、太陽光発電を取り入れるのも節電対策として有効です。
通常、電気代は夜間より日中の方が割高になりますが、電気料金が高い日中の電力を太陽光発電に差し替えることで電気代を大きく削減できます。
また、太陽光発電は災害時や環境対策としても大きなメリットがあります。地震や大雪などによる停電時に設備の稼働を守れる上、火力発電の使用量が減るためCO2削減にもつながります。
太陽光発電は、国や自治体で再生エネルギー導入推進事業の補助金や税制優遇措置などがあり、設備の設置コストも抑えられるため、ぜひ活用したい方法です。
蓄電池の活用
蓄電池を利用して、電気料金の安い夜間に電気を貯め、昼間に使用するというのもひとつの手です。
これまでの蓄電池は、アウトドアや災害用に用いられる5~10kW台の小型バッテリーが一般的でしたが、東日本大震災を契機に工場や店舗などでも使用可能な大型バッテリーの開発・導入が加速しています。
現在では、大型工場での操業にも耐えうる容量2MWh、出力500kWという大型蓄電池も開発・運用されています。
また、蓄電池も太陽光発電同様に、自治体や国の補助制度がありますので覚えておきましょう。
IoT化を進めて夜の稼働時間を増やす
工場全体の稼働状況が見渡せるIoTの導入は少々コストがかかりますが、生産設備や空調設備の電力を無駄なく配分できるようになるため、大きな省エネ効果を生み出します。
また、現場にいなくても工場の状況が把握できるため、電気料金が安い夜間の稼働を増やして節電できたという企業もあります。自動化できる作業を夜間に回すのも省エネのひとつです。
3.工場の電気代の算出方法
工場の使用電力は高圧電力に分類されますが、一般家庭の電気料金の計算方法とそう大きく変わりません。ぜひ、計算方法を覚えておきましょう。
電気料金の計算式
通常、工場の電気料金は基本料金と電力量料金、それに再生可能エネルギー発電促進賦課金によって求められます。
<高圧電力の電気料金の計算式>
電気料金=基本料金+電力量料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金
<計算項目の詳細>
・基本料金=基本料金単価[円/kWh]×契約電力[kW]×(185-力率)/100 ※1
・電力量料金=電力量料金単価[円/kW]×使用電力量[kWh]+燃費量調整額 ※2
・再生可能エネルギー発電促進賦課金=再生可能エネルギー発電促進賦課金単価[円/kWh] × 使用電力量[kWh] ※3
※1「力率」は、供給電力のうち実際に消費した電力の割合。力率85%を上回ると基本料金が割引、下回ると割増になる。
※2「燃料費調整額」は、燃料費調整単価[円/kWh]×使用電力量[kWh]で算出する。発電燃料の価格変動に応じて電気料金を調整するためのもので、燃料価格相場の上昇や下落に伴って変動する。平均燃料価格44,200円を上回る場合はプラス、下回る場合はマイナスで調整される。
※3「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は、電力会社が民間の再生可能エネルギーを買い取る際の費用を電気利用者全体で負担するというもの。事業内容によって減免措置がある。2020年12月現在の再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は2.98円/kWh。
工場の電気料金の計算例
では、小~中規模程度の工場(高圧電力A、契約電力500kW以下)を想定して電気料金を計算してみましょう。
まず、計算に使用する電力量料金単価と使用電力量は、夏季(7月~9月)と、その他季(10月~6月)で分けられているので、計算したい月の単価と使用電力量を確認します。
また、契約プランによっては夜間・昼間・ピーク時間など時間帯別に電力量料金単価が設定されているものがあるので、その場合は単価ごとに計算しましょう。
今回は、その他季の1か月分として計算します。
<計算に用いるデータ>
・基本料金単価:1200円/kW
・契約電力:150kW
・力率:90%
・使用電力量(その他季): 10,000 kWh
・電力量料金単価(その他季):16円/kWh
・燃料費調整単価:-3円/kWh
・再生可能エネルギー発電促進賦課金単価:2.98円/kWh
<電気料金の計算式>
電気料金=①基本料金+②電力量料金+③再生可能エネルギー発電促進賦課金
<計算例>
① 基本料金
基本料金単価[円/kW]×契約電力[kW]×(185-力率[%])/100=基本料金
1200円/kW×150 kW×(185-90%)/100=171,000円
② 電力量料金
(電力量料金単価[円/kWh]×使用電力量[kWh])+(燃料費調整単価[円/ kWh]×使用電力量[kWh])=電力量料金
(16円/kWh×10,000 kWh)+(-3円/kWh×10,000kWh)=130,000円
③ 再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギー発電促進賦課金単価[円/kWh]×使用電力量[kWh]=再生可能エネルギー発電促進賦課金
2.98円/kWh×10,000 kWh =29,800円
以上の数値を計算式に当てはめると、電気料金は以下のようになります。
171,000円+130,000円+29,800円=330,800円
「力率」も節電のポイント
基本料金の計算で使用する力率を上げることでも電力コストを抑えられます。例えば、東京電力では力率85%を上回ると基本料金が割引になり、下回ると割増になります。
通常電力のみを使用している場合の力率は80~90%が一般的なので、それほど気にする必要はないかもしれませんが、太陽光発電などを導入している場合は、力率85%以上にコントロールできるパワーコンディショナーやケーブルなどを検討しましょう。
4.まとめ
工場運営にかかるコストの中で電気代はかなりのウエイトを占めており、省エネ対策は必須といえます。
電気料金を安く抑えるためには省エネ機器の導入だけでなく、電気を効率的に使用するための見える化やIoT化、電気料金自体を下げる電力会社の見直し、太陽光発電や蓄電池の活用などが効果的です。
また、工場の電気料金の算出方法を覚えて、電力コストの把握や削減に役立てましょう。