工場のエアコンプレッサー効率化のポイントは点検と制御
様々な機器が稼働する工場では日々膨大な電力が消費されていますが、中でも大きな割合を占めるのがエアコンプレッサー関連機器です。その消費電力は製造現場で使用する電力の20~25%にもなるといわれています。
そのため、工場の省エネを進める際はエアコンプレッサーの効率化が欠かせません。では具体的にどのようなポイントに気をつければ良いのでしょうか。
今回は、エアコンプレッサーの効率化における日常的な点検の重要性、点検時のポイント、効率化する具体的な方法などをご紹介します。
目次 [非表示]
1.エアコンプレッサーの効率化は毎日の点検から
エアコンプレッサーの効率化を目指すなら、まずは毎日の点検をきちんと行うことが基本となります。
随分と地味な対策のように感じられるかもしれませんが、点検とメンテナンスの不足がエアコンプレッサーの消費電力を増やす原因となっているケースも多いのです。
数値を参照すべき計器類に不具合があれば正確な状況を把握できませんし、汚れやオイル不足はコンプレッサーの動作効率を下げ、無駄な電力を使うことになります。
また、ドレン溜まりやオイル不足は腐食や故障の原因となりますが、「オイルの減りがやけに早い、部品が摩耗している?」と、トラブルの予兆にいち早く気づくためには毎日の点検を通して異常を判断するしかありません。
2. エアコンプレッサーを点検するポイント
エアコンプレッサーを点検する際のポイントを確認しておきましょう。
計器類
計器類の指示値のチェックはもちろんですが、計器自体が正常に作動しているかどうかも忘れずに確認しましょう。
オイル
オイル不足は故障に直結する可能性があるため非常に重要です。オイル量は油面計やレベルゲージを使って毎日確認します。
また、オイルの減りが異常に早い場合は部品の摩耗が考えられます。減るスピードは日々確認し、違和感があれば部品点検を行いましょう。
ドレン
エアタンクや配管など各所のドレン溜まりも毎日必ず点検し、溜まっているドレンは排出します。コンプレッサー本体だけでなく、接続しているエアドライヤー内も確認しましょう。
ドレンには水分だけでなくオイルやホコリが含まれているため配管の腐食を招き、オイル中に混ざればサビを、エアに混ざれば末端機器の故障につながります。
ドレンはコンプレッサーを稼働させている限り常に発生するので、毎日の点検と排出が非常に重要です。
エア配管
エア配管も点検します。ドレンが溜まっていないか、バルブの状態に問題はないか、老朽化していないかといった点をチェックしましょう。圧力損失や故障の原因になるサビやホコリの侵入も要注意です。
3. 工場のエアは制御や調整でも効率化できる
エアコンプレッサーの効率化は各種設定を調整することでも可能です。
エアコンプレッサーの電力消費量は、空気使用量や必要圧力などコンプレッサー側の条件のほかに、工場側のライン・負荷変動なども関わっています。
仮に省エネ効果の高いコンプレッサーを新たに導入したとしても、これらの要素を考慮した正しい運用がされなければ、期待するような効果は得られません。電力消費に影響する基本要素を知り、適正に制御することが大切なのです。
次章で詳しく解説します。
4. エアコンプレッサーを効率化する方法
エアコンプレッサーを効率化する方法は、次のようなものが挙げられます。
制御システムを活用する
制御システムを活用してエアコンプレッサーを効率化する方法があります。インバータ回転数の制御、所定の圧力幅での負荷/無負荷の制御、吸入絞りの制御などがコントロールできる装置を導入して、使用状況に応じた無駄のない適正値に設定すれば、消費電力がだいぶ抑えられます。
コンプレッサーの吐出圧力を下げる
エアコンプレッサーの吐出圧力を下げる方法は省エネ手法として有名です。
たとえば吐出圧力を0.1MPaG下げるとすると、計算上では約7%の動力低減につながります。配管内の圧力が下がれば、エア漏れが少なくなり、末端機器で消費される圧縮エア量も減りますので、工場全体のエア消費を抑えられるというわけです。
コンプレッサーの吸い込み温度を下げる
エアコンプレッサーの吸い込む空気の温度を下げた場合も、原単位(Nm3/kWh)が改善し省エネになります。
機種によって効果に違いはありますが、吸い込み温度を35℃(100%)から25℃に下げた例では、レシプロコンプレッサーでは約3.4%、ターボコンプレッサーは約2%、ドライスクリュコンプレッサーは約1.7%の原単位改善が見られたというデータがあります。
ただし、吸い込み温度を下げて効率化するためには、吸入圧力損失を最小限にすること、熱交換器にチラー水を使用しないことが条件となります。
配管設備・製造ラインの見直しと改善
エアコンプレッサーの配管設備や製造ラインの見直しも、効率化につながる重要なポイントです。
配管の口径は通過流量に対し適正か、圧力損失要因となるバルブの開き具合、フィルタの目詰まり、ドレン溜まりもチェックして問題があれば改善しましょう。圧力損失が少ない配管レイアウトへの変更が可能であれば、それもぜひ検討を。
また、稼働していないラインへのエア供給を遮断する、ラインのレイアウトを効率の良い配置に移設する、製造工程を見直すなども高い省エネ効果が期待できます。
5. まとめ
工場で大きな消費電力を占めるエアコンプレッサーですが、毎日の点検や制御などによって効率化できます。
毎日の点検やメンテナンスは電力消費を増やす不具合の発見や防止につながります。また、
空気使用量、必要圧力、工場側の負荷変動などの調整、吐出圧力を下げる、吸い込み空気の温度を下げるのも効果的です。
その他にも、製造ラインをエアコンプレッサーの効率を考えた配置に変更するなど様々な手法がありますので、ぜひ実践してみましょう。