IoTによる工場の見える化はメリットだらけ?メリットや導入の流れ、注意点とは
整理整頓などによる生産現場の「見える化」は、今も昔も生産性向上に欠かせない手法のひとつですが、時代の流れとともにインターネットを活用した「IoTによる見える化」が普及してきました。
しかし、「IoTも見える化も聞いたことあるけど実際何をどうしたらいいのか分からない」と悩む工場経営者、管理者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、IoT導入による工場の見える化について、そのメリットや導入手順などについてご紹介します。
目次 [非表示]
1.工場の「見える化」とは
そもそも「見える化」とは「目に見える管理」を指す言葉です。
今でこそIoTのような高度な情報共有システムの活用が主流になってきましたが、問題の早期発見・防止のために1990年代後半から取り入れられてきました。
見える化の本来の目的は「全員が問題を認識し、課題を共有して解決に当たる」ことです。これを実現できれば紙での管理方法でも問題ありませんが、デジタル化が進みデータでの在庫管理などが身近になったことから、「見える化といえばIoT」という認識が広まったと考えられます。
見える化を最短で実現するには、データの収集・分析をリアルタイムに行えるIoTの活用が必須になりつつあるといってよいでしょう。
2.IoT導入での見える化が工場にもたらすメリット
それでは、インターネットを通して工場の見える化を実現すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
生産効率アップ
デバイスを使用すると、在庫量の把握や設備の稼働状況、生産進捗などをリアルタイムで確認できるため、発注ミスによる在庫切れ、各工程の作業進捗が見えないことによる納期遅れが減り、生産性が向上します。
スムーズな在庫管理や進捗管理により、ムダのないスピーディーな生産が可能になるでしょう。
品質の安定化
IoTにより収集・蓄積される情報や製造データは宝の山。集まった情報を分析すれば、不良品が出にくい製造方法や設備トラブルの発生しづらい環境条件などを検討しやすくなります。
品質が安定するだけでなく、熟練の職人のスキルやノウハウをデータ化すれば、優れた技能を社内で共有し品質向上も期待できます。
事故の防止
設備の稼働状況を常時モニターすることで、不具合の兆候(振動、温度上昇など)をいち早く感知し、事故を未然に防げます。
リモートでのモニタリングもできるため、管理者が常に現場に張り付いている必要はありません。出張中や移動中、夜間稼働での急なトラブルでも瞬時に状況を把握できるでしょう。
コスト削減・省エネ
デバイスツールやインターネットの導入と聞くと予算面で折り合わない、と感じるかもしれませんが、結果的にコスト削減につながるケースが少なくありません。稼働状況に応じて設備の電力量を調整できるようにすれば、省エネが実現し、場合によっては大幅なコスト削減も期待できます。
さらに、従来は人が行っていた検査やその記録作業、日報の作成などが不要になるため、人材の有効活用や人件費の削減にもつながるはずです。
3.IoTを導入して見える化する流れ
「IoTによる見える化」を行う基本的な流れを確認しておきましょう。
①.目的を決める
まずは見える化の目的を決めます。
生産効率アップ、省エネ、設備制御などが考えられますが、いきなりすべてをIoT化するとなるとイニシャルコストが大きくなるため、目的や用途の範囲内でデータ化を進めていくようにしましょう。
全体最適ではなく個別最適を目指し、無理のない規模の「スモールスタート」から始めることが、低コストかつ継続的に見える化を推進していくコツです。
②.IoT化に必要な機材をそろえる
次に、IoT化に必要な機材や環境を揃えます。
設備や作業員のデータを取得・収集するための装置として、データを保存するサーバーやPC(データベース)が必要です。また、収集したデータを分析するための装置として、システムやデバイス(ERPやAIなど)も揃えなければいけません。
システム関連の部署がない場合は、専門業者に相談する、担当者を雇うなどでくわしい人の判断を仰ぎながら進めていきましょう。
③.セキュリティ対策を検討・整備する
必要な機材がそろったら、セキュリティ対策を検討し、整備を進めます。
あらゆる機器・設備をインターネット接続すると、情報漏えいやサーバー攻撃のリスクが高まるため、接続する前に十分な対策を行っておく必要があります。
政府の策定した「IoTセキュリティガイドライン」を参考にして、情報セキュリティの整備を進めましょう。
④.目的に沿ってデータ化・整理を行う
運用段階に入ったら、目的に沿ったデータの収集と整理を行います。
収集すべきデータの内容は、どういった現場で何を重視したいかにより異なってきます。例えば、生産効率アップが目的であれば、生産数、不良部品の数やその内容、担当者の作業時間、設備の設定内容や環境条件、定期検査結果といった情報がデータ化の対象となるでしょう。
⑤.データを集積・分析して改善に活かす
収集したデータをクラウドに蓄積し、分析します。分析する人のスキルによってはAIを用いるという方法もありますが、いずれにせよ分析データから不具合の原因や最適条件を導き出し、現場の改善につなげていきます。
この分析データの活用こそが、見える化にIoTを利用することの意義といってもよいでしょう。改善策を実施した後の結果確認と、さらなる改善策の立案も忘れず行います。
4.見える化はIoT導入だけでは終わらない
見える化はあくまで異常を知らせるサインであり、課題を効率的に発見・解決するための手段です。
IoTを導入するだけで満足するのではなく、それによって見えてくるものに対して行動し、改善につなげること、基本の5Sや現場確認も怠らないようにしましょう。
また、IoTの安全な運用には、ソフトウェア更新、初期設定からの適切な変更などを含め、情報セキュリティ対策やメンテナンスを継続して行うことが非常に重要です。今後を見据えた運営体制をきちんと構築しておくようにしましょう。
5.まとめ
生産現場の「見える化」は決して新しい手法ではありませんが、「IoTによる見える化」に戸惑う人は多いかもしれません。
スモールスタートから始める、情報漏えいやサーバー攻撃の脅威に対する十分な対策を講じるといったポイントを押さえれば、IoT導入は品質の安定化、事故防止、コスト削減・省エネなど多くのメリットをもたらしてくれます。
特に、蓄積したデータを分析して現場改善に活かすというIoTの真の価値を高める運用を目指せれば、従来の「見える化」をはるかに超える大きな効果が期待できるでしょう。