ポンプ性能を活かす方法

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工場で使われるポンプはさまざまな用途に使用され、目的や使用する流体によって多くの種類があります。

しかし、全てのポンプで性能を測る指標は共通しているため、どのポンプでも、指標を理解して適切な使用方法で性能を維持していくことが重要です。

今回は、ポンプ性能を表す指標や、性能を十分に活かす方法、配管時の注意点についてお伝えします。

目次

1.ポンプとは

ポンプとは、外部から動力を加え、液体や気体といった流体に機械的な仕事を付加する装置を指します。

機械的に流体に与えられる力は速度、圧力、位置エネルギーに変わり、液体の移送・汲み上げ・攪拌などに広く利用されます。

目的にあった最適なポンプを選び使用するためには、ポンプの性能を示す指標や活用方法について理解しておく必要があります。次の章から詳しくご紹介します。

2.ポンプ性能を表す指標

ポンプの性能は、主に流量、全揚程、出力(軸動力)、ポンプ効率の4つの指標で表せます。それぞれの指標について見ていきましょう。

①.流量

流量は吐出し量や揚水量とも呼ばれ、ポンプを作動させた際に一定時間に吐出できる液体の量を指します。一般的に、次の単位が使用されます。

L/min:1分間に吐出できる流体の量をリットル単位で表したもの
m³/min:1分間に吐出できる流体の量を立方メートルで表したもの
m³/h:1時間に吐出できる流体の量を立方メートルで表したもの

②.全揚程

全揚程とは、液体に付与するエネルギーを、水を揚げられる高さ(水柱)に換算したものです。外部から加える力には速度、圧力、位置エネルギーなどがあり、対象となる流体にもさまざまなタイプがありますが、全揚程を表すときは一律、水換算で行います。

単位には「m」を使用しますが、水換算ということを強調して「mAq」と表記されるケースもあります。高さを圧力(MPa)に換算した場合、10m≒0.1MPaとなります。

ポンプで揚水した際の全揚程は以下の式で求められます。

全揚程(H)
=吸込全揚程+吐出全揚程
=(吸込実揚程[Hsa]+吸込配管抵抗[Hsf])+(吐出実揚程[Hds]+吐出配管抵抗[Hdf])

③.出力(軸動力)

モーターが回転するエネルギーを出力または軸動力といい、出力によりポンプを回転させ、揚水することができます。
単位としてはkWを用います。

④.ポンプ効率

ポンプ効率とは、出力をどのくらいの割合で水動力に変換できるかを示す値です。ポンプ効率は下記の式で求められます。

ポンプ効率の単位は「η(イータ)」で表されますが、同じポンプでも流体同士の衝突や摩擦、運転状況によって変動する場合があります。

イータ[η]=水動力[Pw]/出力[P]×100%
※水動力(Pw)…ポンプが一定時間に水に与えるエネルギー

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3.ポンプ性能を活かすポイント

ポンプの性能を落とさずに使用するにはどのような点に注意すればいいのでしょうか。ここから、ポンプ性能を活かすポイントについて詳しく見ていきましょう。

ケーシングと吸込み配管内を流体で満たす

非容積式ポンプの場合、ポンプケーシング内と吸込み配管内を液体で満ちた状態で使用することが前提となっています。もし、空の状態で運転を続けると、空転を起こし焼損してしまう恐れがあります。これを空運転といいます。

この空運転が発生すると、ポンプは適正な機能を発揮できません。空運転を予防するために、ポンプ軸をタンク液面以下に設置し、自然に液体が流入するように工夫しましょう。

ポンプ軸を液面より高い位置に設置しなければならない場合は、呼び水・エア抜きを行う、あるいはバルブを用いて液体の逆流を防止するといった対策をとる必要があります。

配管内に空気が流入しないように配置する

配管内に空気が混入すると、そのぶん搬送効率が低下してしまいます。期待できる最大の吐出圧や流量を得られるように、配管内に空気が入らないように設置しましょう。

吸込み側配管は空気が抜けづらい鳥居配管・下り勾配配管を避ける、吐出し側配管ではエア抜きバルブを設置するといった方法で、エアの混入を最小限に抑制できます。

吸込み配管内の圧力低下を防ぐ

配管内で圧力差が生じると、短時間で泡の発生と消滅が繰り返される現象が起きることがあります。これをキャビテーションと言いますが、発生すると配管内を非常に大きな衝撃圧が襲うため、配管内部にダメージが生じる可能性があります。

当然、ポンプが損傷すれば性能が落ちてしまうため、性能を維持して使い続けるためには、吸込み配管内の圧力低下を防ぎキャビテーション対策を行うと効果的です。

ポンプを低い位置に設置する、継手やバルブは抵抗係数が小さいものを使用する、低い温度で液体を流すなどの対処法が考えられます。

ポンプはゆっくり稼働・停止させる

キャビテーションと同様に、ウォーターハンマーも配管を損傷する恐れがあります。ウォーターハンマーは、配管内の圧力が急激に変化することで発生する現象で、ポンプ性能を著しく低下させる可能性があります。

ウォーターハンマーはポンプやバルブ類を急激に作動すると発生しやすいため、グローブバルブやゲートバルブといった緩開閉が可能なバルブを採用する、ポンプにフライホイール(慣性車輪)を取り付けてできるだけポンプをゆっくり停止させるといった対策が有効です。

液体によってはシールレスポンプを選ぶ

ポンプは、構造上モーターの動力をケーシング内の羽根車に伝える役割があるため、軸とケーシングの間に隙間ができてしまいます。この隙間から流体が漏れることを軸シール漏れと呼びます。

軸シール漏れによりポンプが腐食する可能性があるため、引火性・爆発性・毒性のある液体や、強酸・強アルカリなど、環境に流出してはいけない液体をポンプにより輸送する場合は、シールレスポンプを使用します。

シールレスポンプは、マグネットポンプ・キャンドモータポンプなどがあり、ケーシング内で液体が流出しない構造になっています。

4.ポンプ周りの配管の注意点

ポンプの性能を最大化し、安定した状態で作動させるためには日々のメンテナンスが欠かせません。そのために、メンテナンススペースを十分に確保して配管を設置する必要があります。

特にポンプはサイズが大きいため、メンテナンススペースを広めにとらなければなりません。吊り上げる際に必要な上部の空間やリフターなどの作業スペースも考慮しましょう。

5.まとめ

ポンプの性能を最大限に活かすためには、流量、全揚程、出力、ポンプ効率といった指標を理解し、性能を維持する運用を心掛ける必要があります。

空運転やキャビテーション、ウォーターハンマーを防ぐためには、ポンプ内を液体で充たす、ポンプはゆっくり稼働させるといった対策が有効です。

また、日々のメンテナンスもポンプ性能の維持には不可欠です。ポンプ周りには十分なメンテナンススペースを確保して配管を行いましょう。

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