配管のウォーターハンマーを防止する方法
水道の栓を急に締めるとたまに聞こえる「コン」という音。それ自体は軽微な音ですが、実はウォーターハンマーが発生しているのかもしれません。普段意識することはありませんが、工場の配管では大きな問題になる可能性があります。
ウォーターハンマーは配管内に大きな圧力が掛かってしまう現象ですので、放っておくとポンプや配管に深刻なダメージを与える可能性があります。
今回は、なぜウォーターハンマーが発生するのか、防止するにはどのような対策を講じればいいのかをご紹介していきます。
1.ウォーターハンマーが発生する仕組み
ウォーターハンマーとは、バルブの急速な開閉などにより、配管内を流れる流体のスピードが急激に変化し、配管内の圧力が上昇・下降して大きな衝撃が発生する現象のことで、水撃作用とも言います。
■発生する仕組み
ウォーターハンマーが起こる要因として圧力変動と水柱分離の2種類が挙げられます。
例えば、レバー式の水道栓などを急に閉じた時、衝撃音が響く場合があります。これは圧力変動によるウォーターハンマーで、水道管内の水が行き場を失い水の運動エネルギーが圧力エネルギーに変化することで、配管に衝撃を生じさせて音が鳴ったのです。
ポンプを急停止させた場合、慣性力で進み続けようとする流体にポンプから供給される流れが追い付かず、圧力が急激に低下してフラッシュ(蒸発)による気層が生じます。これを水柱分離と呼び、配管内で流体の動きが止まって圧力が回復すると、水柱同士が衝突し衝撃を発します。
■ウォーターハンマーの影響
家庭用の水道などから「コン」などという音が聞こえる程度であれば、大きな問題はありませんが、工場内の配管から大きな衝撃音や振動がする場合は注意が必要です。
ウォーターハンマーによる衝撃は配管を流れる流体の流速や密度に比例するため、ポンプの出力が大きくなると、その衝撃波は数MPaにも達します。配管中の計測機器を破損させたり、配管自体を破裂させる可能性もあるためとても危険です。
2.ウォーターハンマーを防止するポイント(配管)
ここでは、配管への工夫でウォーターハンマーを防止するポイントをご紹介していきます。
まず、配管口径に定められている最大流量を確認します。流体が最大流量を超える恐れがある場合は、以下の表を参考に1サイズ大きな配管径に変更すると安心です。
流速を下げると急速な流速の変化を抑えられ、圧力変化によるウォーターハンマーの発生リスクを抑えられます。
さらに、ポンプの吐出し側配管にサージタンクを設けると、水柱分離が誘起される前に流体を供給できるため、ウォーターハンマーが起こる可能性が低くなります。
3.ウォーターハンマーを防止するポイント(バルブ)
ウォーターハンマーの防止には、配管システムに応じた適切なバルブの設置も有効的です。ここからは、ウォーターハンマー防止に効果的なバルブについてみていきましょう。
■急開閉するバルブ類を避ける
レバー式の水道管でウォーターハンマーが生じるのは、回転式の蛇口に比べ急激に水の流れを変えることが原因であり、これは配管に設けられたバルブも同じです。
急開閉するバタフライバルブ、ボールバルブなどは避け、緩やかに開閉できるバルブを使用するとウォーターハンマーのリスクを軽減できます。流量を穏やかに制御できるバルブとしては、グローブバルブやゲートバルブなどがあげられます。
■チェックバルブを使用する
チェックバルブは逆止弁とも呼ばれ、主に流体の逆流を防ぐ目的で使用します。液体配管の立上り部にウエハー式(ウイング式)やディスク式といったチェックバルブを設けると、戻りウォーターハンマーを防止できます。
ただし、同じチェックバルブでもスイング式、ボール式、リフト式バルブはウォーターハンマーの防止効果がないため、注意が必要です。
■エア抜きバルブやリリーフバルブを設置する
エア抜きバルブ、リリーフバルブの設置も効果的です。
配管の高い位置にエア抜きバルブを設置して空気の通り道を作ることで、配管内で水柱分離が生じたときに弁から空気が流入し、急激な圧力の変化を防げます。
また、リリーフバルブは配管内で過大圧力が発生すると圧力を開放してくれます。そのため、ポンプの吐出側配管に取り付けると、自動的に配管内の圧力を調整し、配管やポンプに生じるダメージを最小限に抑える効果が期待できます。
4.ウォーターハンマーを防止するポイント(ポンプ)
ウォーターハンマーは圧力の急激な変化で誘発されるため、ポンプの急激な稼働や停止によっても発生します。
ポンプにフライホイール(慣性車輪)を取り付けると、慣性力によりポンプをゆっくりと回転させながら徐々に停止させられるため、圧力の急激な変化を抑えることができます。
5.まとめ
ウォーターハンマーは、配管内の急激な圧力の変化によって発生する衝撃のことです。工場など高圧力・大流量で運用している配管で生じると、ポンプや配管に深刻なダメージを受けてしまう恐れがあります。
ウォーターハンマーを防止するには、配管サイズを上げる、急開閉するバルブを避けてチェックバルブやエア抜きバルブ、リリーフバルブを設置するなどの対策に加え、ポンプにフライホイールを取り付けると効果的です。