静電気

静電気とは?

静電気とは、物体が帯電している状態、または帯電している電気(電荷)そのものを指します。静電気は電気を通しにくい物に発生し、帯電しても静かにとどまっているため静電気と呼びます。

乾燥した冬場のドアノブを触って、青白い火花がバチッ!(痛っ)という経験をされた方は多いかと思います。また、子どもの頃に下敷きを脇の下で擦って髪の毛を逆立て遊んだものですね。これらの現象は静電気によることはよく知られています。

静電気の電位はどのくらい?

静電気による人体へのショックのことを電撃と呼びますが、体に感じる電撃の強さと電撃の電位(電圧)と表すと以下のようになります。
冬場のドアノブを触った瞬間の激痛をともなう青白い火花の静電気が、約10kVAなんですね。雷も静電気の放電現象と同じ原理ですが、雷の場合は1~100万kVAとなり、さらに電流も数万Aになると言われています。

人体の
電撃電位(kVA)
体に感じる電撃の強さ 現象 衣類に溜まる静電気
1.0 まったく感じない。 かすかな放電音 ナイロンカーペットの上を歩く
2.0 指の外側に感じるが痛くはない
3.0 針で刺された感じで、チクリと痛む
4.0 針で深く刺された感じで、指がかすかに痛む 放電時の発光が見える ポリエステル作着を脱ぐ
アクリルセーターを脱ぐ
アクリル毛布を折りたたむ
5.0 手の平から前腕にかけて痛む 指先から放電発光が伸びる
6.0 指が強く痛み、後腕が重く感じる
7.0 指、手の平に強い痛みと痺れを感じる
8.0 手の平から前腕まで、痺れた感じがする
9.0 手首が強く痛み、手が痺れた感じがする
10.0 手全体に痛みと電気が流れた感じがする 暗闇で青白い発光が見える
11.0 指が強く痺れ、手全体に強い電撃を感じる
12.0 手全体に強打された感じがする

「静電気安全指針」産業安全研究所編

静電気が発生する仕組み

そもそも、物体には電気的特性があります。その理由は、物体は原子でできており、原子は原子核と電子からできているからです。
原子核の中の陽子はプラスの電荷をもち、電子はマイナスの電荷はもっています。普段はプラスの電荷とマイナスの電荷は同数で、電気的にバランスがとれた中性状態になっています。そのため、触っても電気が流れないのです。
しかし、接触や摩擦によって2つの物体の片方から、もう片方にマイナス電荷の電子が移動することで電荷のバランスが崩れ、それぞれの物体が電気的に偏った状態になります。
マイナス電荷が奪われた方はプラスが強くなり、マイナス電荷を奪った方はマイナスが強くなります。
この状態を静電気と呼び、それぞれプラスの静電気、マイナスの静電気を帯びていることを帯電と呼んでいます。この帯電した状態の物体に金属(導体)が触れると、一気に電気が放電(=ESD)されるのです。

帯電列と静電気の発生しやすさ

静電気には、プラスの静電気とマイナスの静電気がありますが、物質によってプラスに帯電しやすいものとマイナスに帯電しやすいものがあります。この帯電のしやすい物質の順番を示したものを帯電列と呼んでいます。
2つの物体を擦り合わせた場合、プラス側の物がプラスに帯電しやすく、マイナス側の物がマイナスに帯電しやすいのです。
発生する静電気は、2つの物体の帯電列が離れているほど大きくなります。

静電気の種類

静電気はみな同じに見えますが、発生状況により「接触帯電」「摩擦帯電」「剥離帯電」の3種類に分かれます。

種類 発生理由 発生事例
接触帯電 物体と物体が触れ合うことで発生する 掃除機で吸引するとホースの先端にほこりがつく
摩擦帶電 2つの物体の摩擦や接触で発生する 下敷きで頭をこすると、髪の毛がくっつく
冬場にセーターを脱ぐ
剥離帯電 重なり合った2つの物体が剥離する際に発生する 巻いているフィルムをはがす
スマホの保護フィルムをはがす

生産現場での静電気の弊害

化学業界などの可燃物が多い業種では、静電気の放電を原因とする爆発・火災は年間で100件前後発生しているそうです。
特に、トナーやカーボンなどの爆発性粉塵を扱う工場では過去に何度も静電気による大規模な粉じん爆発が発生しています。また静電気の放電による半導体などの電子部品やシステム機器が破壊される事例も数え切れません。
生産現場での静電気の弊害には、以下のようなものがあります。

静電気の弊害 内容
ゴミの付着 静電気の発生で、ホコリやゴミが製品に付着する
静電破壊 帯電した静電気の放電により、製品が破壊される
塗装印刷不良 静電気により、塗装や印刷にムラが生じる
生産効率の低下 設備にフィルムがくっつき、フィーダーが詰まる
粉体がホッパーや搬送コンベアに付着したり、目詰まる
静電気ノイズ 静電気の放電によるノイズで、設備が誤動作する
発火・爆発 静電気放電により、火災や爆発が起こる
電撃2次災害 電撃によるショックで、物を落としたり、足を滑らせる

代表的な静電気対策

接地(アース)を接続

金属などの導体の場合は、接地(アース)を接続することで、静電気は大地に流れます。
しかし、ゴムやガラスなどの絶縁体の場合は、接地(アース)を接続しても効果がありません。

リストバンド、アースマット

作業者も帯電している場合が多いため、アース付きのリストバンドやアースマットを敷設した上での作業により、静電気を逃がすことができます。

帯電防止材料

絶縁体の場合は、表面に帯電防止材料を塗布するなどで帯電を抑制することができます。

導電性材料

表面に導電性材料を塗布することで静電気が逃げやすくなり、帯電を和らげることができます。
また、樹脂などに導電性材料を練り込むことで静電気が逃げやすくなり、帯電しにくくなります。

除電器・イオナイザー

帯電している対象物の電荷を逆の電荷を注いで、電気的に中和させることで除電することができます。

湿度管理(加湿)

静電気は、下表の通り湿度が高くなると帯電しにくくなります。
一般的には相対湿度が60%を超えてくると、帯電電圧は急激に下がってくるので、適切な加湿による湿度管理も非常に有効な静電気対策となります。

静電気発生源(帯電物) 相対湿度10~20%   相対湿度65~90%
カーペットの上を歩く人体 35,000V 1,500V
ビニール床を歩く人体 12,000V 250V
テーブル作業を行なう作業者 6,000V 100V
ビニール包装資材 7,000V 600V
普通のポリ袋を作業台からつまみ上げる 20,000V 1,200V
ウレタンのクッションのついた椅子 18,000V 1,500V

(MIL-HDBK-773Aより)

下左図のように、静電気は湿度が高くなると、短時間で散乱し解消することが分かっています。
また下右図のように、湿度が高くなると電気抵抗が小さくなることから、静電気の散乱時間も短くなるのです。

散乱時間と絶対湿度
散乱時間と絶対湿度 電気抵抗と相対湿度

アピステPAUシリーズで、静電気が発生しにくい環境作り

アピステの精密空調機PAUシリーズは、液晶・フラットパネルディスプレイ製造工程、電子部品の製造工程、高機能フィルム・医療品製造工程などの幅広い製造工程で静電気対策として導入いただいています。

とくに、PAU-GR-HCシリーズは、温度・湿度を最適な条件に調整できるのが特長です。