クリーンブースの選定と設置のノウハウ
このサイトでは、クリーンブース選定時や設置時のノウハウや、局所精密空調機を用いて単なるブースを高精度な温調ブース、恒温恒湿ブースにシステムアップさせるノウハウを分かりやすく解説します。
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クリーンブース
クリーンブースは、本格的なクリーンルームと違って、省エネ・低コストで、かつ簡易的に空間をビニールシートやアクリルパネルなどで仕切り、HEPAフィルターを内蔵したファンフィルターユニット(FFU)を搭載して、内部を陽圧に保ちつつ、外部から粉塵・異物・パーティクルなどの侵入を防ぎ、風量や換気回数に準じたクリーン度(清浄度)を実現する環境製品です。簡易クリーンブースはビニールシート製が主流です。
クリーンブースの導入メリット
クリーンブースの導入メリットをひとことでいうと、簡単にクリーンルーム環境ができるということです。さらに以下のメリットがあります。
- 低コスト
- 短納期
- 設置や移動が簡単
- 省エネ、省電力
クリーンブース設置時の注意点
クリーンブースを設置する際には以下の点に注意すべきで、考慮せずに設置すると思わぬ問題となります。
【温度の問題】
例1. クリーンブースの周囲温度が夏冬での温度差(寒暖差)が大きいため、クリーンブース内の温度が通年で非常に変動が激しい。
例2. 周囲の空調ではクリーンブース内まで冷房が効かず、クリーンブース内が温度上昇のため暑い。
例3. 近くの装置からの輻射熱の影響を受けて、クリーンブース内が暑くなる。
例4. クリーンブース内の装置のモーターの排熱で、クリーンブース内が暑くなる。
例5. 数人の作業者と照明の影響で、温湿度が上がり、作業中蒸し蒸しする。
<解決方法>
解決方法はいくつか考えられますが、簡単に設置でき、温調精度もアップし、安定化できる方法が便利です。
案1. フロア空調機などの設定温湿度条件をクリーンブース内が快適になるまで調整します。
案2. フロア空調機などの冷暖房の風の流れをクリーンブース方向に向けます。
案3. フロア空調機などの冷暖房能力を大幅にアップします。
案4. クリーンブースへの侵入熱を遮断する対策をします。
案5. クリーンブース内の発生熱を排熱するために換気能力をアップします。
案6. 簡単に後付けできるスポット精密空調機を設置します。
関連リンク:導入事例│精密空調・局所空調│株式会社アピステ
【クリーン度の問題】
例1. クリーンブース内の清浄度のばらつきが大きい。
例2. クリーンブースへの出入りが多いのでクリーン度がすぐに悪くなる。
例3. クリーンブースの清浄度がすぐに悪くなり、HEPAフィルターが目詰まりする。
<解決方法>
案1. 換気回数を多くし、クリーンファンフィルターの風量を大きくします。
案2. クリーンブースの出入り口を外気が流入しにくい形状に変更します。
案3. クリーンブースの出入り口に前室を設置します。
案4. 粉塵などが少ない場所に設置場所を移動します。
クリーンブース内の温度分布
クリーンブース内の温度分布は、次の条件などによって影響されます。
- 周囲の温度変化
- 外気導入エアの温度変化
- 周囲からの輻射熱
- クリーンブース内の発熱源および稼働状況
- クリーンブースの排熱および換気状況
- クリーンブースの表面の材質、熱伝達係数
以下のテスト結果から、クリーンブース内の温度分布を見てみましょう。
<テスト内容>
換気回数を変えて、ブースの中の9点の温度を測定し比較。
<測定条件>
- ブース寸法:H2080×W1580×D700(容積:2.3㎡)
- 空調機種:PAU-GR800SE-HC
- 周囲環境:24℃/35%(一般空調あり)
<考察>
- 異なる換気回数でも吹出し口での温度精度は変わらない。(±0.1℃)
- 吹出し口からの距離が遠くなると温度のバラツキは大きくなる。
クリーンブースの選定方法
1.周囲の設置環境(チェックポイント)
まず設置場所の環境(粉塵状況、空調条件)を確認します。
- クリーンファンユニット内のHEPAフィルターが目詰まりしやすい、粉塵が多い場所は避けます。
- 空調のない場所では、特に夏場はクリーンブース内の温度上昇、梅雨時などの湿度上昇で、作業者の不快感が増大し、製造品質、歩留まりに影響が出ます。
2.クリーンブース内の温度管理・湿度管理(チェックポイント)
クリーンブース内は、人や装置、照明などにより温度が上昇するため、推定発熱量を考察します。試供品や原材料の物性や特性を安定させるために温度や湿度管理は重要です。
- 温度管理・・・ブース内の温度を冷却/加熱/除湿し、一定に維持します。(恒温)
- 温湿度管理・・・ブース内の温度と湿度を、冷却/加熱/除湿/加湿し、一定に維持します。(恒温恒湿)
- 温度除湿管理・・・ブース内の温度と湿度を、冷却/加熱/+除湿し、ドライルームに維持します。(ドライ)
3.対象空間サイズ
設置場所に応じた、ご希望の高さ×横幅×奥行(mm)で決定していきます。ただし、梁や柱などのフレームの強度や構造によってはサイズには制約がでてきます。事前にクリーンブースメーカーにご相談することをお勧めします。
4.要求クリーン度と換気回数
要求クリーン度を満足させるためには、クラスごとの必要換気回数を満たさなければなりません。クリーン度のクラスごとに、1時間あたりの換気回数の目安が決まっています。
換気回数が少なすぎると、出入り時の乱流に弱くなり、復帰時間が長くなり、経年劣化でクリーン度が低下する原因になります。
また換気回数が多すぎると、ビニールシートの場合、シートが膨れ上がったり、周囲のほこりを巻き上げる原因になります。
5.クリーンファンフィルターユニットの台数と清浄度分布
クリーンブース内のクリーン度は、必要換気回数に見合った風量のクリーンファンフィルターユニットを設置すればクリーン度は満たします。
しかしながら、クリーンブース内の清浄度はクリーンファンフィルターユニットから出るクリーンエアの領域以外では悪くなります。そのため、清浄度分布の均一化が望ましい場合は、クリーンファンフィルターユニットの台数を複数台にし、吹出箇所を増やすと、清浄度分布が向上します。
6.クリーンブースの材質(フレーム/シートおよび仕切り)
フレームの材質には、アルミ、スチール、ステンレスなどが一般的です。
- 周囲からの侵入熱や輻射熱が予想される場合は遮熱効果の高い材質を選びます。
- アルミフレームは、強度と外観に優れ、軽量です。
- スチールフレームは、より強度があり、安価ですが、錆びや塗装はがれの可能性があります。
- ステンレスフレームは、耐腐食性が高く、清潔で、医薬品や食品業界に適しています。
シートや仕切りの材質は、用途や目的によって異なります。ビニールシート系、アクリルパネル、アルミパネル、断熱パネルなどがあります。
シートの素材は、消防法により不燃素材や防炎素材の使用が義務付けられています。
また、塗料や接着剤、シーラントを使用する場合、一部の電子部品製造工程では、VOC(揮発性有機化合物)ガスの発生にも注意が必要です。事前にクリーンブースメーカーにご相談することをお勧めします。
7.その他の仕様および機能(照明/スイッチ/ブレーカ/出入口/空調など)
それ以外に、照明の有無や要求照度、電源関連のスイッチや設置場所、ブレーカーの有無、出入口の仕様、クリーンブース内の空調などを検討する必要があります。
クリーンブースを手軽に温調ブース/恒温恒湿ブースにバージョンアップ
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<設置作業フローイメージ>
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省エネにしたい