測定/試験/検査を行う環境の温度管理

製造プロセスや研究開発では、製造物を一定の品質基準に保つために測定や検査が行われます。しかし、正確なデータを得るためには測定機・試験機・検査機の設置環境の温湿度管理を行うことが重要です。

この記事では測定/試験/検査を行う環境の温度管理について解説します。

測定機とは

測定機とは、対象物の物理的な大きさや量を定められた基準で定量化(数値化)する機器です。測定機には、目的や精度などにより簡易的に寸法が測れるマイクロメータから高精度な測定ができる三次元測定機まで、実に幅広い測定機があります。

試験機とは

試験機とは、材料の強度・硬度など物質的特性を調べる「材料試験機」、製品の出力・燃費など性能を調べる「性能試験機」、特定の環境での材料や製品の変化を調べる「環境試験機」などがあります。定められた基準や環境で試験することにより、製品の品質を保証することができます。

検査機とは

検査機とは、工程内や出荷前などの製品や部品が仕様通りにできているか、異常がないかを、仕様に則り定められた基準で検査をする装置で、不良品が市場に流出することを防止します。インラインでもオフラインでも行われます。

測定機・試験機・検査機に求められること

測定機・試験機・検査機には一般的に、次のようなことが求められます。

  1. 再現性
  2. 目的や用途に合った最適な方法
  3. 要求を満たす精度
  4. 測定時間と工数

再現性は、測定/試験/検査を行う際に最も重要視される項目で、同じ環境条件であれば常に同じ結果が得られるということを指します。再現性が低いとデータ自体の信頼性を損ないます。再現性を上げるためには、常に同じ環境で、対象物も常に同じ状態、同じ品質、同じ物性であることが必須条件となります。

特に、温度や湿度が変化すると、原材料の機械的/物理的/化学的物性や電気特性が変化します。原材料の状態や品質が変化すると、再現性のある信頼性データが得られないばかりか、製造ラインにおいては歩留まりの悪化、不良品の増加につながり、製造品質を維持できなくなる原因となります。

製造業の多くはISO9000およびJIS Q 9000の品質マネジメントシステムに準拠しています。中心となるISO9001では、測定のトレーサビリティについて規定されており、製造過程における測定の正確性が規定されています。そのために、測定機や試験機などは、周辺の温度や湿度を一定に保つことが重要になります。

測定機の設置環境

測定機の設置環境条件については、JIS Z 8703-1983で以下のように明記されています。

  • 標準状態の温度は、試験の目的に応じて20℃、23℃又は25℃のいずれかとする。
  • 標準状態の湿度は、相対湿度50%又は65%のいずれかとする。
  • 標準状態の気圧は、86kPa以上106kPa以下とする。

ISO 554-1976では、推奨標準状態を23℃、相対湿度50%、気圧86kPa以上106kPa以下としています。
標準状態の許容差は、試験の目的に応じて下表のように級別されています。

表1 標準状態の温度の許容差

級別 許容差°C
温度 0.5級 ± 0.5
温度 1級 ± 1
温度 2級 ± 2
温度 5級 ± 5
温度 15 級 ± 15

(ISO554-1976を元に弊社作成)

備考:温度15級は標準状態の温度20°Cに対してだけ用いる。なお、5~35°Cの温度範囲を常温という。

表2 標準状態の湿度の許容差

級別 許容差%
湿度 2級 ± 2
温度 5級 ± 5
湿度 10級 ± 10
湿度 20級 ± 20
   

(ISO554-1976を元に弊社作成)

備考:湿度20級は標準状態の相対湿度65%に対してだけ用いる。なお、45~85%の湿度範囲を常湿という。

対象物の長さを測定する場合は、ISOの標準温度は20℃と決められており、1時間以上の温度慣らしが必要とされています。

このように、測定機を設置する際は標準状態を作り上げるために、試験の目的に応じて一定の温度管理・湿度管理を行うことが重要です。

測定に最適な環境を作るには

測定機の設置環境の温湿度管理は一般的には全体空調ですが、全体空調の導入には多大な建設費と、設置工事のために長期間の工期が必要になります。

導入に大きなコストがかかる全体空調に代わる方法としてご提案するのが、局所精密空調機です。局所精密空調機の場合は、本体の設置には大掛かりな工事は不要で、測定機を設置する対象空間をクリーンブースなどで囲い、精密空調機本体とブースをダクトでつなぐだけで測定機に最適な空間を作ることができます。

また、全体空調の場合は空間全体を温調するため、 肝心の測定機付近だけの温湿度を改善することは困難なため、標準状態からの許容差を維持することが難しいですが、局所精密空調機は対象空間を限定し、必要な空間のみを空調するため、より効率的に、より高精度に温湿度管理をすることが可能です。

測定環境の温湿度管理についてお悩みがございましたら、ぜひアピステへご相談ください。

測定、試験、検査に最適な環境を実現します