フロン排出抑制法の概要
フロン類の確実な回収や処理を目的とし施行された「フロン回収・破壊法」が改正され、2015年4月に「フロン排出抑制法」が施行されました。これにより、業務用の冷凍冷蔵機器や空調機器を所有(管理)している方は、「定期点検」などに取り組むことが義務付けられるなど、フロン類に係るすべての主体に対して取り組みを促していく法律として、さらに取り決めが強化されています。
施行の背景
「フロン回収・破壊法」は特定機器の使用済フロン類の回収・破壊に関して規制していましたが、廃棄時の冷媒回収率はわずか3割程度で推移していました。経済産業省の調査では、冷凍空調機器の使用時において、平均的に機器に再充填される冷媒の相当量が漏えいしていることも判明しています。こうした、高い温室効果を持つフロン類の機器使用時の漏えいが防げないといった背景から、フロン類の製造から廃棄までのより包括的な対策を講じることが急務となり、法改正が実施されました。
フロン排出抑制法の全体像
フロン排出抑制法はフロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体に対する包括的な対策です。フロンメーカーにはGWP値の低い新冷媒の開発、製品メーカーには冷媒転換の促進、破壊・再生業者には適正な再生・破壊など、すべての関係者に対応が求められています。
「フロン排出抑制法」の対象
第一種特定製品の管理者が対象となります。
フロン類を使用した機器のうち、第一種特定製品に当たる業務用の冷凍空調機器の管理者は、法に基づき、管理の適正化に努めることが必要となります。
第一種特定製品
冷媒としてフロン類が充墳されている次のような機器です。
業務用の空調機器(エアコン)
…パッケージエアコン、ビル空調用ターボ冷凍機、チラー、スクリュー冷凍機、ガスヒートポンプエアコン、スポットエアコン 等
業務用の冷蔵機器及び冷凍機器
…冷蔵・冷凍ショーケース、自動販売機、業務用冷蔵庫・冷凍庫、冷水機、ビールサーバー、輸送用冷蔵冷凍ユニット 等
管理者
当該製品の所有権の有無もしくは管理権限の有無によって判断されます。
所有及び管理の形態(例) | 「管理者」となる者 |
---|---|
自己所有/自己管理製品 | 当該製品の所有権を有する者 |
自己所有でないリース/レンタル製品 | 当該製品のリース/レンタル契約で管理責任を有する者 |
自己所有でないビル・建物付帯設備 | 当該製品を所有・管理する者(建物のオーナー) |
※出展:東京都 環境局環境改善部環境保安課 資料より抜粋
第一種特定製品の管理者に求められる取り組み
「フロン排出抑制法」により、第一種特定製品の管理者には以下の6点の義務が課せられています。
- 製品の適切な場所への設置、
設置環境の維持保全 - 製品の定期的な全数点検
- 製品の整備履歴の記録・保存
- フロン類の漏えい時における適切な措置
- 漏えい量の報告
(1000CO2-t/年間以上の場合) - 機器整備時におけるフロン類の充填
及び回収の委託
- 点検について
- フロン排出抑制法では、フロンを含むオイルチラーや制御盤用クーラーにおいても3ヶ月に1回以上の頻度で全数点検を義務付けています。
- 整備記録簿に
ついて - フロン排出抑制法では、フロンを含むオイルチラーや制御盤用クーラーにおいても、点検や修理、冷媒の充填・回収等の履歴を機器ごとに1枚の記録簿に記録・管理する必要があります。
機器 | 圧縮機定格出力 | 点検頻度 | 点検実施者 | 点検内容 | |
---|---|---|---|---|---|
簡易点検 | すべて | 3か月に1回以上 | 限定なし | ・冷蔵機器及び冷凍機器の庫内温度 ・製品からの異音、製品外観(配管含む)の損傷、腐食、錆び、油のにじみ並びに熱交換器の霜付き等の冷媒として充填されているフロン類の漏えいの兆候有無 |
|
定期点検 | 冷凍冷蔵機器 | 7.5kW以上 | 1年に1回以上 | 機器等に関する十分な知見を有する者 (社内・社外は問わない) |
・定期的に直接法や間接法による専門的な冷媒漏えい検査を実施 |
空調機器 | 7.5〜50kW未満 | 3年に3回以上 | |||
50kW以上 | 1年に1回以上 |
フロン排出抑制法の改正
2020年4月に、フロン類の回収率をさらに向上させることを目的にフロン排出抑制法が改正されました。この改正により機器を廃棄する際にフロン類を回収しなかった場合は、行政指導を経ることなく、即座に罰金が科せらることになり、関係者への規制が強化されています。
強化内容
①廃棄等実施者(機器を廃棄する者)は、フロン類を充填回収業者に必ず引き渡しを行う。
→違反したら直接罰で50万円以下の罰金
②廃棄等実施者(機器を廃棄する者)は、回収依頼書、委託確認書の交付を必ず行う。また、回収依頼書(写し)、委託確認書(写し)、引取証明書を必ず保存(3年間)する。回収依頼書、委託確認書の記載内容不備や虚偽記載は行わない。
→違反したら直接罰で30万円以下の罰金
③廃棄等実施者(機器を廃棄する者)は、廃棄機器を引き渡す場合は、引取証明書(写し)を引取等実施者(廃棄機器を引き取る産業廃棄物業者やリサイクル業者)へ必ず交付する。
→違反したら直接罰で30万円以下の罰金
④引取等実施者は、機器の処分を再委託したり、譲渡するときは引取証明書(写し)を必ず回付する。また、取等実施者は、引取証明書(写し)を保存する。
→違反したら直接罰で30万円以下の罰金
直接罰:交通反則制度での行政処分と異なり、告発され刑事裁判で有罪判決を受けると前科がつく司法上・刑事上の責任となります。
フロン管理者様が取り組む措置~段階別~
準備段階
・社内の冷凍空調機器の調査・リスト化
・点検記録簿の作成
管理担当者、簡易点検実施者の決定
定格出力、空調機器/冷凍冷蔵機器の区別、初期充塡量等の把握と記載
使用時・整備発注時
・適切な設置、設置する環境の維持管理
・簡易点検・定期点検の実施と点検記録簿への記録
必要に応じ、第一種フロン類充填回収業者による充填・回収
→充塡証明書・回収証明書の受取
漏えいの疑いがあるときは速やかに点検・修理(専門業者への依頼)
廃棄時
・廃棄等の前にフロン回収を依頼、書面(回収依頼書等)の交付
・第一種フロン類充塡回収業者による回収
・引取証明書の受取・保管(引取証明書が交付されない場合、都道府県に通知)
・再生証明書・破壊証明書の受取
・引取証明書写しの交付
フロン管理者様が作成 又は 保存すべき書面等
書面等 | 保存期間等 | ||
---|---|---|---|
準備段階、 使用時・整備 発注時 |
作成 (法定外) |
第一種特定製品のリスト | - |
作成・保存 | 点検記録簿 | 第一種特定製品の廃棄等に係るフロン類の引渡しを行った日から3年間保存(機器譲渡時には引き継ぎ) | |
作成 (対象事業者のみ) |
フロン類算定漏えい量報告 | 事業所管大臣へ報告 | |
受取 | 充塡証明書・回収証明書 | 保存義務はないが、点検記録簿への転記や漏えい量の算定に必要 | |
受取 (回収時のみ) |
再生証明書・破壊証明書 | 保存義務はないが、処理状況の確認が望ましい | |
廃棄時 | 交付・受取・保存 | 行程管理票 (回収依頼書、委託確認書、 再委託承諾書、引取証明書) |
3年間保存 |
受取 | 再生証明書・破壊証明書 | 保存義務はないが、処理状況の確認が望ましい | |
交付 | 引取証明書の写し | - |
このように、フロン類を冷媒と使用した機器を使用する際には適切な維持管理と、廃棄時の確実なフロン類の回収が義務付けられており、管理者の業務負担は大きくなってきています。また、法改正により、法令遵守が徹底されなかった場合の罰則が強化され、管理者に刑事罰が科せられるようになったため、より一層管理リスクが高まっています。
アピステでは地球環境への配慮と、ユーザー様の管理負担・リスクを低減するために、2013年に業界で先駆けてフロン類を使用しない「ノンフロン制御盤用クーラー」を開発し、製造現場の熱問題の解消とユーザー様の負担低減に向けて取り組んでいます。