チラーの選び方
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PCU シリーズの選び方
チラー選定の重要性
チラーは安定稼働のため、装置の使用条件・設備使用状況に合致したものを選ぶことが大切です。チラー設置場所・配管距離形状等にも注意が必要です。
チラー選定にあたっては、使用条件・使用状況とチラーの機能・性能・仕様をマッチさせることが大切です。
このマッチング作業をおろそかにすると、実際に運転を開始してから、期待した性能を発揮しなかったり、冷却対象となる機器やチラーそのものがトラブルを起こしたりする事態に至ることも考えられます。
ワーク(冷却対象)の設定温度や熱量の問題に加えて、例えば、ワークとチラーをつなぐ配管の太さ・長さ・形状によって揚程が変わるなど、他の設備装置と比べてもチラーの機種選定は単純ではありません。
そこで本巻では、設備に適したチラーを導入するための選定方法について分かりやすくご紹介いたします。
チラー選定の4つの確認・決定プロセス
前述の通り、チラーは冷却対象の設備・作業にあった製品を選定することが重要です。最適なチラーを選定するには、使用条件を確認しながら決定していくプロセスがあります。次にご紹介する4つの確認・決定プロセスをおさえて、しっかり設備にあったチラーを選定していきましょう。
チラーとワーク(冷却対象)の構造図
チラー選定手順-1:循環水の温度を決める
ワーク(チラーの冷却対象となる装置や作業)の最適温度から、循環水の温度を決定します。
①冷却するワークの最適な温度を決定します。
②循環水の温度を決定します。
チラー選定手順-2:設置場所【屋外⇔屋内】・冷却方法【空冷⇔水冷】を決める
③設置場所を屋外・屋内のどちらにするか、また、冷却方法を空冷・水冷のどちらにするかを決定します。
○屋外設置(PCU-SLシリーズのみ)
- 屋内に排熱が出るのを避けたい場合(空冷の場合)
- 屋内に気流が発生するのを避けたい場合(空冷の場合)
- 屋内に設置するスペースがない場合
○屋内設置
- 設備の近くでチラーを操作したい場合
- 配管を短くしたい場合(圧損を小さくする、配管コストを抑える)
- 設置工数を減らしたい場合
●水冷[冷却水との熱交換で循環水を冷却]
- 冷却水(水道水、井戸水、クーリングタワー等)のご手配可能な場合
- 排気、排熱が問題になる場合(精密な空調設定時、作業者環境の悪化等)
●空冷[外気との熱交換で循環水を冷却]
- 冷却水(水道水、井戸水、クーリングタワー等)のご手配が困難な場合
- 空冷による排気、排熱が許容できる場合
空冷チラー・水冷チラーの特長と内部構造図
チラー選定手順-3:冷却能力を決める
④ワークの温度変化や、循環水の流量・温度差などから冷却に必要な能力を算出します。
チラーの冷却能力の決定方法について詳しくは熱量計算方法をご参照ください。
チラー選定手順-4:必要揚程を確認する(ポンプの能力確認)
下記配管状況によって必要な揚程(ポンプが循環水を送り出す能力)が変化します。
⑤配管長、⑥配管径、⑦継手(曲げ回数)により必要な「揚程」を求め、選定するチラーのポンプ能力がそれを充足しているかを確認します。
必要揚程の計算方法について詳しくは揚程計算方法をご参照ください。
熱量計算方法
チラーの能力を選定する際は、
(1)熱負荷の熱量 < (2)チラー冷却能力
となるように選定します。熱負荷の熱量、チラー冷却能力は下記式にて算出します(計算例、参考資料あり)。
(1)熱量計算方法
PCU series 熱量計算方法
熱量計算式
Q[kW] =- Q :負荷容量[kW]
- ①Vs :対象物の体積[m3]
- ②Cs :対象物の比熱[kJ/kg・℃]
- ③γs:対象物の密度[kg/m³]
- ④ΔT:対象物の温度差[℃]
- ⑤ t :対象物の冷却時間[sec]
計算例(1)
タンク内の800 Lの作動油が1時間で30℃⇒60℃へ温度上昇するとき
下物性表より、②1.95、③870 また、④60 - 30 = 30
単位換算を行い、①800 L = 0.8m3、⑤1h = 3600sec
上記数値を計算式に代入して、
( 0.8 x 1.95 x 870 x 30 / 3600 ) x 1.2(安全率) = 13.6 kW
計算例(2)
設備へ流入させる冷却水がIN:26℃、OUT:29℃、流量が45L/minのとき
下物性表より、②4.18、③998 ④29 - 26 = 3
流量を分子と分母に分解し、下記単位換算表を基に単位換算すると、 36 L/min = 36 L / 1 min = 0.036 m3 / 60sec よって、①0.036、⑤60
上記数値を計算式に代入して、
( 0.045 x 4.18 x 998 x 3 / 60 ) x 1.2(安全率) = 11.3kW
※循環溶液が水の場合、物性値等を係数として、温度差[ΔT]と流量[A]
だけで下記式でも求められます。
Q[kW] = 0.07 × A[L/min] × ΔT[℃]
計算例(3)
質量3kgの鉄製のワークを熱処理後、3分間の間に250⇒40℃まで冷却したいとき
下物性表より、②0.46 また、④250 - 40 = 210
単位換算を行い、⑤3min = 180sec
①、③に関しては、体積[m3] x 密度[kg/m3] = 質量[kg] と単位換算できるので、① x ③ = 3となり、
上記数値を計算式に代入して、
( 3 x 0.46 x 210 / 180) x 1.2(安全率) = 1.93 kW
単位換算表
①体積Vs | 50 L | = 0.05 m3 |
---|---|---|
100 L | = 0.1 m3 | |
1000 L | = 1 m3 | |
②比熱Cs | 1 cal/g・℃ | = 4.18 kJ/kg・℃ |
1 kcal/kg・℃ | = 4.18 kJ/kg・℃ | |
1000 J/kg・℃ | = 1 kJ/kg・℃ | |
③密度γs | 1 g/cm3 | = 1000 kg/m3 |
⑤時間t | 1 min | = 60 sec |
1 H | = 3600 sec |
物性表
- 数値は全て20℃のとき。
- 表の値は参考値です。この表を用いた計算結果につきまして弊社はいかなる責任も負いかねます。
物質名 | ②比熱(kJ/kg・K) | 太陽吸収率 | ③密度(kg/m3) |
---|---|---|---|
液 体 |
水 | 4.18 | 998 |
水溶性切削油(水90%) | 3.90~4.05 | 940~960 | |
潤滑油 | 1.80~1.95 | 850~870 | |
スピンドル油 | |||
作動油 | |||
金 属 |
鉄(鋼材) | 0.46 | 7870 |
アルミニウム | 0.91 | 2700 | |
銅 | 0.39 | 8900 | |
真鍮 | 0.38 | 8500 | |
亜鉛 | 0.39 | 7150 | |
非 金 属 |
セラミック | 0.80 | 3600~3950 |
ガラス | 0.80~0.84 | 2600~2700 | |
ベークライト | 1.59 | 1270 | |
樹 脂 |
ABS(スチレン・ブタジエン等) | 1.35~1.65 | 1000~1150 |
EP(エポキシ樹脂) | 1.10 | 1850 | |
PC(ポリカーボネート) | 1.25 | 1200 | |
PE(ポリエチレン) | 2.30 | 910~960 | |
PET | 1.25 | 1450~1670 | |
PMMA(アクリル) | 1.48 | 1200 | |
PP(ポリプロピレン) | 1.95 | 900 | |
PS(ポリスチレン) | 1.35 | 1030~1070 | |
PVC(ポリ塩化ビニル) | 0.85~2.1 | 1160~1450 |
(2)チラー能力確認方法
循環水温度(チラーの設定温度)、周囲温度(空冷の場合)、冷却水温度(水冷の場合)を確認し、対象機種の特性グラフから算出します。
例)循環水温度25℃、周囲温度20℃の時、PCU-3300Rの冷却能力を求めます。
上記グラフより冷却能力が3600Wと求められます。(周波数60Hzにて選定)
揚程計算方法
冷却水を循環させるのに必要なポンプの力は「揚程」で表すことができます。
揚程は、チラーと負荷(装置)をつなぐ配管の状況によって変わりますが、ポンプの能力 > 配管より算出した必要揚程となることが条件となります。以下に、配管条件等から、揚程を算出する方法をご紹介します。
ステップ1 : 配管長を求めます。
チラーから装置までの配管の長さ :
3+5+4=12m×2(往復分)=24m…①
ステップ2 : 継手の抵抗を直管長に変換し、配管長に加えます。
継手の直管相当長を表より求めます。
表より…ねじ型90°ショートエルボの25A→1.6m
1.6×4(ヵ所)=6.4m…②
①+②=24m+6.4m=30.4m…③
名称 | 継手形状 | 管径(上段B)(下段mm) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1¼ | 1½ | 2 | 2½ | ||
25 | 32 | 40 | 50 | 65 | ||
90° ショートエルボ |
ねじ | 1.6 | 2.0 | 2.3 | 2.6 | 2.9 |
フランジ | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.9 | 1.1 | |
90°ロングエルボ | ねじ | 0.8 | 1.0 | 1.0 | 1.1 | 1.1 |
フランジ | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 0.9 |
継手の形状によって抵抗が変わるため、上記の表にて直管長に変換したときの値を確認します。
ステップ3 : 流量と配管径から「損失水頭※Hf(m)」を求め、「ステップ2」配管長合計にかけます。
流量30L/min、配管径25Aの場合、右のグラフよりHf=0.04Hf(m)…④
③×④=30.4×0.04=1.2(m)…⑤
※損失水頭:菅の摩擦による圧力を配管の径別、流量毎に配管1m毎の長さで表したもの。
※ウィリアム・ヘーゼン公式
Hf=5.4775×10-3・C-1.85・D-4.87・Q1.85・L・α
(D:菅の内径、Q:流量、L:菅の長さ、α:安全率)
ステップ4 : チラーから装置までの上昇高さを加え、揚程を算出します。
チラーから装置までの高さ:5mの場合…⑥ ⑤+⑥=1.2(m)+5(m)=6.2(m)
必要な揚程は 6.2m…⑦
ステップ5 : 4で算出した揚程を満たすポンプを選定します。
グラフに示されたチラーの揚程能力は、流量30L/minのときは揚程が35m(60Hzの場合)。
従ってこのチラーの揚程能力は必要揚程(6.2m)を満たしています。
35m > 6.2m
例1) 循環水流量30ℓ/minの時PCU-3310Rの揚程は(必要流量>定格流量の場合)
※上記のグラフより揚程は、35mと求まります
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