チラー 周辺情報 2-2.液冷式熱交換器(液体―液体)
2-2.液冷式熱交換器(液体―液体)
液冷式熱交換器(液体―液体) の構造・特徴について説明しています。
液冷式熱交換器の役割と用途
熱交換器は温度の高い流体から低い流体へ熱エネルギーを移動させる機器のことです。液体や気体などの流体を用いて効率的に熱エネルギーを交換することで、加熱や冷却の用途で使われます。 工業製品の生産工程や、建物の空調用など幅広い用途で使用されています。
・油圧プレス機用オイルクーラー
・射出成型機の金型冷却水クーラー
・ローラー冷却水用クーラー
・ 冷凍機、蒸気・温水ボイラーなど
・ 温泉、プールの温度管理
・ ビル・建屋の空調用
液冷式熱交換器の種類
液冷式熱交換器とは、2系統の流体を混合することなく効率よく熱交換できるように設計された熱交換器のことを言います。液体同士の熱交換器は種類が多く様々な形状の熱交換器がありますが、ここでは使用実績の多い、下記5種類の液冷式熱交換器についてご紹介いたします。
※液冷に使用される冷却水に関しましては「3-1.冷却水の種類と特徴」へ
①ブレージングプレート式熱交換器
・仕組みと構造
下図1のように、電熱プレートを積層させた構造となっており、淵の部分をろう付け(ブレージング)によって密封しています。コストや作業性の観点から、ろう付け部材には銅を使用することが多いです。食品・医薬・半導体などの業界でクリーン仕様が必要な場合は、ニッケルブレージング、ステンレスブレージングなどを選定することも可能です。
プレート間の隙間を高温液体と低温液体が交互に流れる構造となっており、効率よく熱交換することが可能なため、交換熱量の割に小型になります。下図2のように高温液体と低温液体を逆方向に循環させる”対向流”にするのが、熱交換効率としては有利になります。
図1.ブレージングプレート式熱交換器外観
図2.ブレージングプレート式熱交換器構造
・特徴
○交換熱量の割に小型です。
○比較的コストが低いです。
○流路が狭く分解できないため、固形物のつまりが発生する可能性があります。
②ガスケットプレート式熱交換器
・仕組みと構造
プレートが積層し、2種類の流体が交互に流れる点はブレージング式と同じですが、こちらはプレート間をゴム製のガスケットで仕切っています。両端の固定プレートを締め付けている締付ボルトを外すことで、プレートやガスケットのメンテナンスを行ったり、プレート枚数を追加して冷却能力の増強をすることも可能です。その分、熱交換器サイズはブレージング式と比較するとやや大きくなり、設置時もメンテナンススペースを考慮する必要があります。
図3.ガスケットプレート式熱交換器外観
図4.ガスケットプレート式熱交換器構造
・特徴
○ブレージングタイプよりやや大きくなるが交換熱量の割に比較的小型です。
○プレートを分解して、メンテナンスを行うことが可能です。
○仕様に応じてガスケット材質を変更できます。
③シェル&チューブ式熱交換器
・仕組みと構造
シェル&チューブ(多管式)熱交換器とは、シェル(胴体部)にチューブ(伝熱管部)を収めた、下図5,6のような熱交換器のことをいいます。
同一伝熱面積を得るには、プレート熱交換器と比較するとサイズが大きくなります。その分、シェル(胴体部)は流路が広く、チューブ(伝熱管部)は複数本に分岐しているため、流体の圧力損失を小さく設計でき、高粘度の流体にも対応できます。そのため、高粘度の油を取扱う油圧関連機器や、化学プラントなどでも用いられています。
低温から高温、低圧から高圧また、加熱・冷却・蒸発・凝縮すべての用途に適応できます。
構造がシンプルで分解可能なため(機種によります)、メンテナンスも容易です。
図5.シェル&チューブ式熱交換器外観
図6.シェル&チューブ式熱交換器構造
・特徴
○プレート式と比較するとサイズは大きくなります。
○流体の圧力損失を小さく設計でき、高粘度流体にも対応できます。
○分解して、メンテナンスを行うことが可能です。
○耐圧圧力を高く設計可能です。
④投げ込み式熱交換器
・仕組みと構造
冷却対象液体のタンクなどに管状や板状の熱交換器を浸漬させて冷却する方式。冷却対象液体の循環回路が不要というメリットがあるが、冷却効率を良くするためには冷却対象攪拌機を取り付けるなどの対策が必要となります。
・特徴
○導入が比較的容易です。
○タンクサイズや形状に合わせて、形状や伝熱面積を設計可能です。
○伝熱効率を向上させるために攪拌機などが必要になります。
○攪拌具合を定量化するのが難しいので交換熱量は予測しづらいです。
○冷却水温度が低いと結露が発生し、冷却対象液体へ混入する懸念があります。
⑤ジャケットタンク
・仕組みと構造
図11.のように内槽とジャケット部の二重構造になっているタンクで、内槽に入れた内容物を冷却・加温・保温することができます。ジャケット部に冷却水や温水を循環させることで、内槽に入れた原材料を温調します。
一般的にはステンレス製で清掃が容易なので、食品・医薬品の製造工程でも多く使用されています。循環式の熱交換器に比べ、伝熱面積が小さく温度ムラが発生しやすいため、そのような場合は攪拌機で内槽を攪拌し、伝熱効率の向上・槽内温度の均一化を図ります。
図10.ジャケットタンク外観
図11.ジャケットタンク構造
・特徴
○清掃が容易なのでサニタリー使用にも向いています。
○伝熱効率を向上させるために攪拌機などが必要になります。
○攪拌具合を定量化するのが難しいので交換熱量は予測しづらいです。
まとめ
前の項目:2-1.空冷式熱交換器(液体―気体)
次の項目:2-3.チラーによる直接冷却
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